真如苑基金 第7期 選考結果

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第7期(2023年度)助成事業一覧

応募状況

応募件数 採択件数
件数 金額 件数 金額
全体
 神戸・阪神
 神戸・阪神以外
16件
10件
6件
4,168,000円
2,550,000円
1,618,000円
7件
3件
4件
1,370,000円
800,000円
570,000円

・募集時の予算は130万円としていたが、前回(2021年度助成)での残金が7万円あったため、これを加えて137万円を予算枠として審査した。
・「神戸・阪神」と「神戸・阪神以外」をおおよそ半々と想定したが、前者の方が高評価の案件が多かったため、おおよそ6:4程度の割合となった。
・2年継続助成の案件が計4件あり、このうち最終的に2件が採択されたが、いずれも2年継続の採択とはならず単年度採択となった。

採択団体一覧

神戸・阪神

団体名 事業名 金額
1 (特活)Oneself 外国にルーツを持つ方を対象とした食糧品支援及び地域活動への参画促進事業 ¥300,000
2 こうべ子どもにこにこ会 多文化フェスティバル深江・キッズカフェ&多国籍料理 ¥200,000
3 (特活)ガルーダ・ジャパンコミュニティ 在留外国人の生活環境改善推進事業 ¥300,000
小計 ¥800,000

神戸・阪神以外

団体名 事業名 金額
1 にこにこ日本語教室 にこにこポルトガル語教室 ¥200,000
2 (特活)多文化センターまんまるあかし 外国人住民を情報弱者にしないための地域密着型多言語情報発信事業 ¥150,000
3 なかよし「加古川マダン」開催実行委員会 第21回なかよし「加古川マダン」 ¥120,000
4 (特活)りとるめいと 真如苑・ひょうご多文化共生基金 ¥100,000
小計 ¥570,000
合計 ¥1,370,000

総評

選考委員長 武田 丈

 真如苑・ひょうご多文化共生・外国人支援基金は、1936年に東京都立川市に開祖の伊藤真乗によって開かれた真如苑が、2016年より「ひょうごコミュニティ財団」と協働して行っている助成事業である。最初の3年間は子ども貧困や孤立などの問題に取り組む団体への助成であったが、2019年からはこれまでの取り組みを進化させつつ、テーマを多文化共生や外国人支援の取り組み、とりわけ貧困や暴力、差別に苦しむ人々への支援に資する取り組みを優先的に助成することを目的としている。兵庫県内で活動する団体を対象としているが、2023年度はこうした活動に対する支援があまり十分ではない神戸・阪神間以外(播磨・丹波・但馬・淡路地域)の活動を助成総額の半分程度採択することとして公募を行った。

 応募団体の総数は16件で、そのうち神戸・阪神以外の地域が6件、神戸・阪神地域が10件であった。申請書に基づく1次審査を通過した11件(神戸・阪神以外の地域が4件、神戸・阪神地域が7件)の団体が、2023年3月2日に開催された選考委員会における質疑応答に臨んだ。選考委員会では5名の審査委員からそれぞれの団体に対して約10分間の質疑が行われ、いずれの団体も非常に重要で熱心な活動を展開されていること、苦労しながらもさまざまな工夫や努力を行いながら組織やプログラムを運営されていることが確認できたが、慎重な審査の結果、7件(神戸・阪神以外の地域が4件、神戸・阪神地域が3件)が採択された。残念ながら採択に至らなかった団体も、難民支援であったり、外国にルーツのある子ども学習・母語支援であったり、在住外国人の起業支援を含む多文化共生のための居場所づくりであったり、日本在住の外国人女性のための生活支援など、多文化共生社会を構築していくうえで不可欠な活動を行っておられる。こうした活動が引き続き行われることを願うとともに、来年度に本助成に再度チャレンジされることを期待する。

 末筆ながら、申請書の整理や適切な選考委員会の準備及び進行を担っていただいた事務局とともに、応募されたすべての多文化共生や外国人支援に取り組まれている団体に謝意と敬意を表する。

神戸・阪神

団体名 :(特活)Oneself
事業名 :ルーツを持つ方を対象とした食料品支援及び地域活動への参画促進事業

 申請団体は、外国にルーツを持つ方に対して自立を目的とした日本語支援事業、異文化交流事業、国際交流シェアハウスなどの事業を展開し、社会参画できる環境を提供し地域社会に寄与することを目的にしている。申請事業は、①コロナ禍によってアルバイトを解雇又はシフトを減少された留学生を対象とした食料品支援、②同胞コミュニティとしかかわりがない留学生に地域の子ども食堂に有償ボランティアとして参加してもらうことで地域社会との交流機会を提供するというものであった。質疑応答では、コロナ禍が落ち着きつつある状況であるが、コロナ禍で来日できなかった留学生の入国が再開されたことで留学生向けのアルバイトが十分になく引き続き経済的に苦しい状況に置かれている留学生が多くいる実態や、実際に子ども食堂にかかわることで地域社会との接点を持てるようになった留学生の事例が紹介され、申請事業の重要性が確認された。今後は、緊急支援的な食料品支援から地域社会との交流機会提供の方に軸足を置いて活動していくことを期待する。
(選考委員:武田丈)

団体名 :こうべ子どもにこにこ会
事業名 :多文化フェスティバル深江・キッズカフェ&多国籍料理

 外国人労働者や就学生等の増加により外国につながる子どもたちは増加傾向にある。子どもたちは地域の学校園に通っているが、日本語でのコミュニケーションに支援が必要な子どもたちも多く、それに伴って学習に困難を抱えている場合も少なくない。こうべ子どもにこにこ会は、2002年に発足した団体で、神戸市東灘地域を中心に、多様な文化や社会背景を持った子どもを対象に、日本語・教科、母語の学習や、学校を含む生活面でのサポートを通しての彼らの居場所づくり、 情報発信等に取り組んでこられた。今回は、「多文化フェスティバルふかえ」での、多国籍料理とスイーツを用意したキッズカフェの出店のための申請であった。多様な食文化に触れることで、外国につながる子どもたちの理解が深まることおよび、子どもたち自身のアイデンティティ形成の一助となることが企画の目指すところであるとのことである。当団体は東灘地域での学習支援活動の実績も長く、地域との交流の効果も期待できる。同じ地域で生活する者同士として、国籍等に関わらず様々な人々が集まり、ともに楽しい一日を過ごすことで、外国につながる子どもたちの置かれている状況がよりよいものになるよう期待したい。
(選考委員:石田賀奈子)

団体名 :(特活)ガルーダ・ジャパンコミュニティ
事業名 :在留外国人の生活環境改善推進事業

 申請団体は2022年に日本人だけでなくインドネシア人との混成NPOとして法人設立された団体であり、多文化共生における課題と問題意識を在留当事者として主体的に提示するとともに、広く他国籍在住者との連携による「生の声」を掘り下げて課題解決につなげていくことを目指しておられる。
 コロナ禍の影響で近年著しい国内在留外国人の増加傾向は一時的に抑制されていたが、2022年12月末には過去最高値を示しており、今後も技能実習、特定技能、留学生等、実態としての外国人労働力は大幅に増加が予測されており、様々な多文化共生への取り組みが行われている。これらが往々にして、受け入れる日本人側の視点であることに対し、在留当事者視点での課題への気付きと具体的な対応への取り組みが計画されていることに期待する。
 この度、2年継続助成への申請であるが、初年度の調査・活動で得られたものをしっかりと分析し、そのうえで続く具体の課題解決活動での取り組みを改めてご検討いただくことを願っている。
(選考委員:横川太)

神戸・阪神以外

団体名 :にこにこ日本語教室
事業名 :にこにこポルトガル語教室

 申請団体は、2004年の設立以来、日本語教室や教科学習支援を通じた地域の在住外国人児童生徒支援を継続しておられる。
 近年の我が国の経済環境の伸び悩みやコロナ禍等の社会環境も影響し、対象となるこども達の保護者環境も不安定な状況が続いている。
 こうした中、地域に根差したこども支援を安定して継続するとともに、さらに最近重要性が指摘される母語教育によるアイデンティティの確立をめざすことにより、こどもが地域のみならず我が国の多文化共生社会実現に向けた担い手として育つことを期待している。
(選考委員:横川太)

団体名 :多文化センターまんまるあかし
事業名 :外国人住民を情報弱者にしないための地域密着型多言語情報発信事業

 多文化センターまんまるあかしは、国籍や文化の違いを壁にせずともに生きる社会の実現を目指して、「育てる」「支える」「世界とつながる」「世界をつなぐ」の4つの柱で活動を展開している。2015年4月にボランティアグループとして発足し、日本語・教科学習支援教室「みらいのきょうしつ」の活動から事業を発展させ、2016年5月に法人格を取得している。明石市教育委員会や市民図書館など、行政や他団体との協力関係も地道に築いてこられた。日本語でのコミュニケーションに困難を抱える外国人住民にとって情報収集は簡単なことではない、特にcovid-19の感染拡大以降、情報の多言語化は一層重要であるにも関わらず手薄であったといわざるを得ず、そのことで外国人住民が孤立感を深めていったことは想像に難くない。今回は外国人住民が情報弱者として置き去りにされないための地域密着型での多言語情報発信に取り組まれるということで申請された。多言語情報発信のプラットフォームは公益性が高く、草の根での取り組みが公営化され、地域密着型の情報発信が明石でなくても行えるような枠組み作りへと発展していくことが長期的な展望として期待できる。そうした形での活動の広がりを期待したい。
(選考委員:石田賀奈子)

団体名 :なかよし「加古川マダン」開催実行委員会
事業名 :第21回なかよし「加古川マダン」

 申請団体は、多岐にわたる事業を展開されておられる中でも、過年のコロナ禍で、文化的継承行事等は、各地でどんどん減少していく中でも、経年渡り、当事業を実施されておられ、更に今回は、発展的な事業計画をなされていることに敬意を表します。開催に関しまして、他都市からの支援者も増加されており、益々関わる方々のネットワークの拡がりが生まれることを期待します。又事業の資金調達においては、アフターコロナにおいて、地元企業の協賛等の寄付の有無等が、事業計画においても懸念されますが、同様に開催されておられます団体や同「マダン」の継承を実施してこられたグループ等の関わりを更に拡げられ、事業企画、資金調達、運営なども協働的に進められていくことも一つの選択肢として検討の余地があるのかもしれません。先行き不透明な時代においてこそ、こうした行事が継続されることを願います。
(選考委員:小澤昌甲)

団体名 :(特活)りとるめいと
事業名 :真如苑・ひょうご多文化共生基金

 申請団体は、地域の子育て支援活動を中心に、主に養父市で事業を継続されており、過年のコロナ禍においては、感染状況等において実施の可否等も苦労されながら継続されてこられたことと推察します。その中で、外国人の方への支援も実施されており、人口減少化の地域ではあるものの、今回は活動場所の広域展開(朝来市等)を検討されておられる計画に、団体の勢いを感じさせられました。外国人の在住人数の多少だけではなく、支援のニーズの強弱があります。母国語での対応や生活における緊急時支援のケースも大いに検討される為に、例えばコロナ禍で一般化されつつある、ZOOM等を利用される場合には、他の阪神地区や神戸地区のNPOとの情報交換や連携等も進められつつ、事業計画をされると更に強固な活動となるものと推察します。兵庫県下のNPOが地域を超えた「面」で繋がり、支援が必要とされる対象者に届くことを期待しています。
(選考委員:小澤昌甲)