有園博子基金 第5期 選考結果

有園博子基金 ARIZONO HIROKO FUND

第5期(2023年度)助成事業一覧

応募状況

応募件数 採択件数
件数 金額 件数 金額
全体
 組織基盤強化コース
 活動応援コース
11件
7件
4件
6,838,000円
6,176,000円
662,000円
5件
4件
1件
3,471,000円
3,271,000円
200,000円

・「活動応援コース」「組織基盤強化コース」に分け、予算枠を全体で350万円にするとしていた。
・2022年度の助成総額(7,676,000円)の半分弱となったが、これは2020~2022年度にかけて行った「3ヵ年継続助成団体」(2022年度助成額4,576,000円)への助成が終了したため。
・もし採択に値する案件が多い場合は、多少の超過は許容するものとして審査した。結果的には予定額の範囲内での採択となった。

採択団体一覧

組織基盤強化コース

団体名 事業名 金額
1 (一社)神戸ダルク・ヴィレッジ 子ども時代に虐待を受けた薬物依存症者の回復支援活動の基盤づくり事業 ¥1,000,000
2 CocoKaraルームそら 生きづらさを抱えた人々の身体とこころを「つなぐ」 看護師×臨床心理士による 任意団体「CocoKaraルームそら」設立に伴う組織基盤構築プログラム ¥819,000
3 (特活)こどもサポートステーション・たねとしずく 法人の運営基盤整備と支援者の研修ケア体制の整備 ¥777,000
4 (特活)男女共同参画ネット尼崎 地域で頼られる法人となための「組織基盤強化」 ¥675,000
合計 ¥3,271,000

活動応援コース

団体名 事業名 金額
1 尋の塾 女性と子どもの健康と安全を考える研究会 ¥200,000
合計 ¥200,000
継続団体+組織基盤強化コース+活動応援コース 合計 ¥3,471,000

総評

選考委員長 岩井圭司

 有園基金による活動助成も,今回で第5期を迎えた。助成の対象となる団体,活動を選考するという作業は,私たち選考委員にとって毎回元気と勇気をもらえる体験であり,楽しくまたとても勉強になる,他に類を見ない仕事である。選考のたびに私は,このような機会を与えられていることに感謝せずにはいられない。と同時に,それは毎回とても悩ましい仕事でもある。
 有園基金に限らず,各種の活動助成はそれぞれに目的と対象を設定して行われるのが常である。それに添った団体,活動が助成を受けることになる。語弊をおそれず言うならば,“すぐれた”活動よりも“ふさわしい”活動が選ばれるのである。有園基金もその例外ではない。

 有園博子さん(兵庫教育大学教授、臨床心理士。2017年逝去)のご遺志とご遺産を受けて設立された本基金の場合,助成対象は,「地域限定」かつ「テーマ限定」であることを特徴としている。これまでも,そして今回も本基金では,兵庫県内において以下の4つの領域で行われる支援活動または研究に助成を行っている。その4つの領域とは,ドメスティック・バイオレンス(DV)被害(者),虐待被害(者),性暴力の被害(者),そしてJR福知山線脱線事故の御遺族である。他の助成金に比して,“限定度”は高いと言えよう。

 しかし,そうは言っても,助成対象に該当するかしないかを白か黒か式に判断することは,結構難しい。例えば,限定度の低い親子(母子)支援事業や不登校児童支援事業であっても,そこにはDV被害者や虐待被害児者が多く含まれていることが実際には多いからである。今回も選考委員はこのことに悩み,議論を重ねた。

 さらに,「組織基盤強化コース」では,本基金の助成方針に添った有意義な活動を展開していながら,助成金がどのように組織基盤強化に活かされるのか,申請書を読んだだけではなかなか判断できない団体もあり,このことも悩ましかった。幸いにも,応募団体のヒアリングの中で,そのような疑問点は解消することができたのだが。

 正直言って,有園基金による助成金の額は決して大きいとは言えない。だからこそ,この基金による助成がより有効に機能するように,選考委員は来期も悩み抜くつもりであるので,応募される団体にも申請書の記載のより一層の充実をお願いしたい。

 末筆ながら、応募されたすべての団体の熱意と事務局スタッフのご尽力に感謝します。

組織基盤強化コース

団体名 :(一社)神戸ダルク・ヴィレッジ
事業名 :子ども時代に虐待を受けた薬物依存症者の回復支援活動の基盤づくり事業

 成人期の依存症については、虐待や養育者との死別や離婚、DVの目撃などといった幼少期の逆境体験が影響することが明らかとなっている。また、逆境的体験の程度が強いと、適切な支援につながっても回復に時間がかかる。トラウマを抱えた依存症者への支援において、トラウマインフォームドケア(以下:TIC)の視点に基づいた支援の展開への期待が高まっている。申請団体では、すでに2022年度より、外部のTIC専門家を講師に招き、研修を重ねてきた。その中で自団体の持つ男子依存症者回復施設が持つ文化的特徴としての”マッチョな回復”志向を課題と自覚するようになり、「弱さを認めあい、分かち合える場所」へとの変革を目指しているとのことである。今回の申請では、TIC研修講師としてこれまで辛かかわりのあった専門家をメンバーに迎えた体制を整備しておられ、継続的かつ安定した活動の展開が期待される。TICの視点を持ったスタッフの育成が進むことで、申請団体のメインの活動の一つになっていくことが期待できる。団体の基盤強化となることにあわせて、依存症回復施設における援助技術の一つとしての発展と普及を期待したい。
(選考委員:石田賀奈子)

団体名 :CocoKaraルームそら
事業名 :生きずらさを抱えた人々の身体とこころを「つなぐ」 看護師×臨床心理士による任意団体ルーム「そら」設立に伴う組織基盤構築プログラム

 申請団体は、訪問看護、カウンセリング・発達検査を行う既存の株式会社を母体としており、2023年4月から別組織の任意団体としての活動を予定されている。別組織を立上げた理由は、医療・介護・福祉など制度にも当てはまらない「谷間」の支援の必要性からということであった。中でも、医療者であっても必ずしもDV被害や性被害・トラウマに関して認識が高くはない場合があり、他方で、DV被害者支援団体には障害・疾患を持つ専門的な支援を必要とする被害者を受け入れる団体が少ないことなどに着目され、地域に根差した専門職の視点から、被害者と地域・被害者と支援者を「つなげる」活動に強化事業の一つと位置付けておられる。
 申請団体は、日頃から地域で多職種と連携して活動されており「地域や生活の視点を持つ訪問看護師」としての強みを生かすことができること、臨床心理士が支援の輪に入ることにより、被害者への早期のカウンセリング・心理療法等の提供が可能になり、適時に検査、相談・助言などを行って医療などへタイムリーにつなぐことができるなどの特徴があり、地域での被害者支援の充実が期待できる。また、勉強会開催など、地域での教育・支援者育成も視野に入れられているとのことである。
 母体団体の活動も継続しながら新たに団体として取組まれるので多忙になることが予測されるが、担当者の燃えつきなどに注意し、また、個別ケースの支援を大切にして慎重に実績を重ねてほしい。
(選考委員:西部智子)

団体名 :(特活)こどもサポートステーション・たねとしずく
事業名 :法人の運営基盤整備と支援者の研修とケア体制の整備

 申請団体は、「NPO法人a little」として長年、子育て中の親の支援に取り組み、特にひとり親支援に取り組んだチームを母体に独立して立ち上げられたNPO法人である。法人化は間もないが、代表者やスタッフの経験・専門性の蓄積は充分にある。
 申請事業内容は、予防的支援に重きを置きつつも、DV被害者への視点を看過せず、児童相談所などとも連携しながら、公的支援では届かない隙間の部分の支援に取り組もうとしているところが評価された。NPO法人の事業内容によって、他の助成金との棲み分けを図り、本助成金の趣旨を効果的に生かして事業に取り組まれたい。グループウェアの導入については、メールでの対応で可能かどうかを今一度、精査してはどうか。
 また、今後の事業継続のために、事業資金を安定的に得られる仕組みづくりについて計画的な展望があるところも評価が高かった。その際に、代表者やスタッフに負担がかかり過ぎず、また行政との連携においては対等性が担保できるような形態で事業継続が可能となることに期待する。さらに、さまざまなセクターの団体とも交流を持ち、ネットワークを広げることによる相乗的な事業展開にも期待したい。
(選考委員:三井ハルコ)

団体名 :(特活)男女共同参画ネット尼崎
事業名 :地域で頼られる法人となための「組織基盤強化」

申請法人は、尼崎市女性センター・トレピエを拠点に指定管理事業と自主事業を展開し、地域に根差した活動を18年間にわたって継続されてきた。申請法人が抱える組織基盤強化と人材育成、次世代への理念継承に関する課題は、各地の女性支援分野等で活動する団体からも聞かれるもので、特効薬はないが、まさに今、各団体内で取り組まれているものである。実現され、先駆的モデルになられることを期待している。
当助成金を継続活用により、全国規模の研修等の参加や他地域の団体やスタッフとの情報交換・交流等の中で、スタッフがモチベーションを高めることにつながり、日常の業務遂行に効果が表れてきたことは評価できる。今後も継続的に取り組むためには、研修や視察等の人材育成にかかる費用等の持続的な獲得・捻出方法をご検討いただきたい。
申請法人がこれまでに蓄積されてきた実績やネットワークに加えて、地域の新たな機関・団体等との連携をより一層意識され、併せて継承いただきたい。地域でアテにされる法人として活動を維持・発展していかれることを願っている。
(選考委員:仁科あゆ美)
※各団体の選評は組織基盤強化コースのみ執筆しています。