有園博子基金 第2期 助成実績

有園博子基金 ARIZONO HIROKO FUND

第2期(2020年度)助成事業一覧

有園基金第2期採択団体一覧.pdf(PDF:112KB)
有園基金第2期総評・選評.pdf(PDF:290KB)

継続団体

団体名 事業名 金額
1 (一社)神戸ダルクヴィレッジ 子ども時代に虐待を受けた薬物依存症者の回復支援活動の基盤づくり事業 ¥1,125,000
2 (特活)Giving Tree フォスターペアレント プログラム ¥785,000
3 面会交流支援センターピロティ 子どもの利益となる面会交流等の支援事業 ¥825,000
4 (認定特活)女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ ※1 DV被害を受けた女性と子どもの切れ目のない中長期支援体制の構築 ¥1,790,000
5 (社福)神戸いのちの電話 ※1 「神戸いのちの電話」のボランティア電話相談員の拡大をはかるための広報、養成 ¥835,000
6 (特活)性暴力被害者支援センター・ひょうご ※1 性暴力被害相談のアクセス改善 ¥1,895,000
7 NGO神戸外国人救援ネット 外国人DV被害者女性のための相談活動、及び相談体制強化と人材育成 ¥1,000,000
8 (特活)フェミニストカウンセリング神戸 法人の世代交代における組織と事業の見直しによる基盤強化、事務業務の引継ぎ、および新規スタッフの獲得と既存スタッフの定着に向けた取組み ¥1,000,000
9 (特活)性暴力被害者支援センター・ひょうご【4団体合同企画】 ※2 トラウマ×コミュニティ ~有園基金でつながる・ひろがる・深まる~ ¥270,000
合計 ¥9,525,000
※1 (認定特活)女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ、(社福)神戸いのちの電話、(特活)性暴力被害者支援センター・ひょうごは第4期(2022年)までの3年継続採択
※2 【4団体合同企画】4団体=(特活)性暴力被害者支援センター・ひょうご、(特活)男女共同参画ネット尼崎、(特活)フェミニストカウンセリング神戸、(認定特活)女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ

新規団体

団体名 事業名 金額
1 (公社)ひょうご被害者支援センター 性暴力被害者からの電話相談スーパーバイザー育成事業 ¥500,000
2 (特活)ぴっぴ 育てにくさをもっている子どもと保護者を支援することで虐待の発生予防を行う為の人材育成・組織強化 ¥500,000
3 (特活)いちごの会 DV被害、虐待被害、性暴力被害経験のある依存症者の回復支援に関する研究事業 ¥500,000
合計 ¥1,500,000
新規団体+継続団体 合計 ¥11,025,000

有園博子基金 第2期 委員選評

選考委員長総評

 本基金は、2017年に逝去された有園博子氏(兵庫教育大学教授、臨床心理士)のご遺志を受けて設立され、兵庫県内でDV、虐待、性暴力の被害者、そしてJR福知山線脱線事故の御遺族を支援する活動または研究を助成対象とするものである。今回が第2期であり、第1期からの継続申請と新規申請とについて、募集と選考を行った。

 継続申請については2月24日(祝)に選考委員会を持ち、第1期と同様の申請団体代表との対面面接を行った。一方、新規申請の選考委員会は3月1日(日)に行われたが、応募団体の対面面接は行わず、選考委員による書類審査と討論に基づいて、適宜必要に応じて応募団体に電話で質問をするという形をとった。新型コロナウィルス禍の影響を考慮してやむなく取った措置であったが、実際にやってみると、この方法で却って論点を焦点化できたという部分もあり、選考委員にとっても貴重な体験となった。もちろん、事務局が事前に応募団体のヒアリングを行ってくれていたことがあってのことであることは言うまでもない。

 さて、ふだんは助成金や研究費を申請する立場にある身が選考委員長を務めさせていただいて、改めて気づいたことがある。それは、申請書の多くが「自分たちの活動がいかに意義のあるものであるか」ということに重点をおいて書かれているということである。それはもちろん重要なことであるが、選考する立場から言うと、「自分たちの活動がこの基金の趣旨に合致している」「この基金による(決して大きな額ではない)助成金がカンフル剤の如く作用して、つまずきがちな活動が一気に蘇生する」というような見通しが知りたいのである。

 本基金の助成金の選考はコンペティションではない。その意味では科研費などとは大きく性格が異なる。今回不採択となった団体におかれては、活動内容が評価されなかったわけではないことをご諒解いただきたい。とくに、本基金は「兵庫県内」における活動を助成するものであるので、学術的意義の高い研究活動に対して正に断腸の思いで不採択を決定したことを、ここに付言しておきたい。

 2年目ということで、第1期からの継続申請と新規申請とがあったが、実に様々な活動領域・研究領域からの応募があり、また継続申請の中には複数団体による合同企画も含まれており、われわれ選考委員には複眼的というか立体的な視点が求められた。その意味では選考にあたって苦労もしたが、しかしそれは愉快な苦労であった。

 末筆ながら、応募されたすべての団体に感謝したい。

採択団体選評(継続団体)

団体名 :(一社)神戸ダルクヴィレッジ
事業名 :子ども時代に虐待を受けた薬物依存症者の回復?援活動の基盤づくり事業

 申請団体は、当事者支援活動をベースとした、特に薬物依存症者のためのリハビリ施設である。
昨年度第1期申請事業においては、男性当事者が、薬物依存症者としての側面にのみ焦点を当てがちで、虐待を受けていても被害者として自分を語ることができないという問題意識から、養育環境に着目し、生きづらさの根底にあるものの解明と回復に向けた支援のあり方を検討するための事業計画を示され、その重要性、当事者団体という強みが評価され、無理のない事業計画の範囲で採択された。
 今回は、昨年度の調査の結果、トラウマの問題が当事者に大きく影響していることが明らかになり、第1期申請事業内容を見直し、安全性を優先したプログラム提供のためのトラウマ・インフォームドケア・Therapeutic Community Unitプログラムの各実践を目的に、職員のスキルアップ、ガイドライン・プログラムの開発・実践・普及の各事業について3年間の継続事業として申請された。申請内容は虐待を受けた被害者の支援に資するものであり、また、依存症の困難を抱えた方々の当事者団体が行うことに意義があると考え、成果を期待する。
 もっとも、第1期申請の事業内容の見直しが必要になった経緯及び直接支援を日常業務とする中でトラウマの問題を取扱うことからより慎重さが要求されることを考慮し、単年度の採択とし、採択の範囲は予算のうち必要性・相当性が認められる範囲とした。

団体名 :(特活)Giving Tree
事業名 :フォスターペアレント プログラム

 今回申請された「フォスターペアレントプログラム」は、社会的養護にある児童、およびその出身者の自立支援へのきめ細やかな支援であり、有園基金の趣旨とも合致する。申請額満額で採択された。
 社会的養護にある児童、およびその出身者の自立支援、里親への支援活動は必要不可欠であるにもかかわらず、社会的認知が得られていないために当団体が無償ボランティアで活動されているが、この活動を今後も継続していくためには、例えば事務スタッフに人件費を捻出できるように、基盤を強化するためのさらなる工夫が必要である。
 講師謝金は計上されているのに、事務スタッフの経費は計上されていないので、組織の基盤を固めていくための事務スタッフが軽視されているようにみえてしまう。事業全体を俯瞰して目に見える部分だけでなく、それを支える部分にも手当をしていく必要がある。
また個別の支援を充実させると同時に、他の支援者や機関、有園基金関係機関との交流を活かした連携やネットワークを作っていくことで、さらなる結びつきや発展の道が広がる可能性がある。有園基金がなくなった後、この事業をどのように継続していくのか、長期的な展望も考えていってもらいたい。

団体名 :面会交流支援センターピロティ
事業名 :子どもの利益となる面会交流等の支援事業

 DVの関係から逃れた後、子どもと別居親との面会交流が安全安心に実施されることは、子どもの健やかな心身の育成の大きな要素になりうる。そのため、申請団体は、面会交流支援を行う目的で2018年5月に設立され、実質的に活動初年度となった昨年度、当基金第1期申請事業において、実際の流れに即した準備、訪問調査などによるニーズ把握、スタッフ研修等を終えられた。今年度は、前年度の調査で浮かび上がった課題(利用料、支援期間など)を踏まえ、子どもの視点に立った支援のあり方を実践により検証をすることを第一とし、高葛藤ケースの支援を試験的に実践する目的で当基金を申請された。
 面会交流には、離別を経験した親同士の葛藤は少なからず影響を及ぼすため、慎重な配慮が必要になるところ、子どもの心理面接が実施できる申請団体が、特に高葛藤ケースについて、支援実践・検証を行うことは重要な意義があると考える。
 ただ、葛藤を抱えた当事者間に介入するため、慎重で専門性のある対応が必要不可欠で、かつ、当事者・関係者のみならず、スタッフ自身の安全性の確保も必要となるため、申請内容のとおりの予定件数を実施することが困難であると思われた。そのため、申請事業について有効可能と思われる範囲について減額採択とした。今年度、十分に専門性が発揮され、慎重な配慮がなされた支援の実践と検証がなされることを期待する。
 また、地域のDV支援団体・機関との連携はもとより、裁判所との連携も視野に、子どもの視点に立った面会交流の実現に向けた一層の取組みを期待する。

団体名 :(認定特活)女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ
事業名 :DV被害を受けた女性と子どもの切れ目のない中長期支援体制の構築

 ウィメンズネット・こうべは、1992年の設立以来DV被害者支援に尽力され、DV被害者の包括的支援や若年世代への暴力防止教育、地域で安心できる居場所づくりなどにも積極的に取り組んでこられた。
 「有園博子基金(1期)」では、DV被害女性と子どもの心身の回復支援に向けて、人材育成事業を実施された。第2期は3年間の継続申請として、DV被害者の中長期支援体制構築のために現在の組織基盤や活動について検証され、不足していると思われる5点に対し、強化を行う事業内容となっている。いずれも必要な取組みだと思われるが、組織体制を強化し基盤をつくりながら、新規で国のパイロット事業や他の助成事業も実施されていかれるとのことで、申請事業全体の進捗確認、事業を精査しながら優先度をつけて実施されていくことをお願いしたい。申請事業のボリュームを勘案し、ステップハウス見学にかかる申請については減額との評価となった。
 これまでに貴団体のスタッフが蓄積してこられた高い専門性や支援のノウハウに専門家の意見を加えられ、被害者の自立支援に役立つ情報をとりまとめたハンドブックは、団体の理念継承やスタッフの育成だけでなく、多くの支援関係者に求められているものだと思われる。被害を受けた女性と子どもの切れ目のない中長期支援に関する、行政への提言資料としても期待している。1年目作成予定の第1版、改定を重ねられた最終年の完成版を今から待ち望んでいる。

団体名 :(社福)神戸いのちの電話
事業名 :「神戸いのちの電話」のボランティア電話相談員の拡?をはかるための広報、養成

 社会福祉法人神戸いのちの電話は、生きづらさや不安、孤独の中で精神的危機に陥り、自殺をも考え、助けや励ましを求めて電話をかけてくるひとりひとりと対話し、生きる勇気を持てるように支えていく活動で、現相談員は、無報酬で相談電話に対応、維持会費や研修費などを負担することで法人活動を支えている。昨年度は当基金を活用し、相談員を増やし、24時間365日化を実現するための広報活動、アンケート調査による活動の振り返りに取組まれた。
 第2期は3年の継続申請として、引き続き相談員の拡大をめざし、相談員の維持確保のために研修費等の経済的負担を軽減、相談員養成講座の対象を大学生や大学院生にも拡大、また青少年世代にも「いのちの電話」についてPRすることを目的とされている。20歳未満の自殺が増加し、生きづらさを抱える青少年相談の取組み、効果的なアプローチや人材育成が課題となる中、貴法人の研修委員とのネットワークを活かされることでの実現を期待している。
 活動PRのための著名人を招いたイベント開催にかかる申請分については、企画や事業効果を再検討いただきたく、削減との判断になった。
 若い世代の相談員を育成されることで、現相談員の皆さまの負担軽減と夜間相談時間の増加、相談体制の強化にもつなげられることを願っている。

団体名 :(特活)性暴力被害者支援センター・ひょうご
事業名 :性暴力被害相談のアクセス改善

 性暴力被害者支援センター・ひょうごは、性暴力にあった人の意思とペースを尊重して寄り添いながら、それぞれに必要な支援につなげる活動を続けてこられた。立ち上げから7年を迎え、今回「性暴力被害相談のアクセス改善」事業として3年間の継続申請を申請され満額で採択された。
 採択された事業は、性暴力にあった人への支援に地域格差があることから、バーチャルワンストップ支援センターの維持、動画などを取り入れたリニューアル、いつでも相談できるメール相談の機能強化といった支援の格差をなくすための活動。ハンディキャップをもつ当事者へ届くように情報提供に工夫をする広報の取り組み。拠点病院にとどまらずにつきそい支援や出前相談や出前講座といった新たなアウトリーチの導入。そして事務局機能の強化で、3年間を通して取り組んでいく事業である。
 性暴力にあった人に寄り添いつつ社会におけるニーズの多様性に今後も取り組み、いい意味で縛りのない団体として存続していけるような仕組みづくりを期待している。
 社会の要請に答えつつ、当事者を中心に考えた寄り添った活動をしながら団体もより大きく発展していくために当基金が活用されるのであれば、これに優るものはない。活動報告を楽しみに待ちたい。

団体名 :NGO神戸外国人救援ネット
事業名 :外国人DV被害者女性のための相談活動、及び相談体制強化と人材育成

 日本政府は昨年、外国人労働者の受け入れ増加による新たな労働力の担い手確保を期待し、入管法を改定した。一方、社会における受け入れ態勢は十分に整備されているとはいえず、日本で暮らす外国人は様々な生活上の困難に直面しているのが現状である。
 近年、日本人男性と結婚した外国籍女性からのDV被害に関する相談が増加している。阪神淡路大震災以降、長年にわたって日本で生活する外国人の相談支援に応じてきた神戸外国人救援ネットでは、今回は昨年採択された「外国人DV被害女性のための相談活動と自立支援、および支援のための団体基盤強化」事業の実施と基盤強化のための申請となった。
 具体的には、活動・事業実施としては相談を必要とする人々の生活実態に合わせて、LINE等のSNSを活用した相談窓口の充実、相談員及び通訳者への謝金の確保の申請があった。また、基盤強化としてはホームページやリーフレットのリニューアルによる支援者の拡大とスタッフの育成と専門性の向上が挙げられている。
 支援を必要する人々の生活実態に応じた支援の窓口強化、さらに被支援者が通訳等自らの強みを生かして活躍の現場を得ることにつながる事業展開に今後も期待したい。
 一方で、より多くの外国人女性に当事業が支援の手を差し伸べることができるよう、社会に活動内容の理解を広げていくために事業効果の効率的な社会への発信や、後方支援としての事務局機能の強化などにも取り組んでいただくことを期待する。

団体名 :(特活)フェミニストカウンセリング神戸
事業名 :法人の世代交代における組織と事業の見直しによる基盤強化、事務業務の引継ぎ、および新規スタッフの獲得と既存スタッフの定着に向けた取組み

・活動が長く継続している団体の抱える大きな課題は、「世代交代と次世代への引き継ぎ」であり、「新たなスタッフの育成」であろう。その意味で、「基盤強化」の本事業は継続が望まれるところではあるが、初年度の同事業の成果がいま一つ見えないところに懸念がある。
・別の助成制度も利用しながらコンサルティングを受けておられるようなので、例えば、兼務が多く相談業務に専念できない課題について、リフレクションをして検証しつつ、二年次は、さらなる具体的な「基盤強化」につなげていただきたい。
・また、同時に、助成制度のサポートが無くても、「基盤強化」が見込める仕組みも考案していただきたい。
・その上で、「基盤強化」された貴団体の事業が、今後、どのように社会に対してその成果を還元していけるかのヴィジョンも持ち、次のステップへの継続的な活動に期待したい。

団体名 :(特活)性暴力被害者支援センター・ひょうご【4団体合同企画】※3
事業名 :トラウマ×コミュニティ~有園基金でつながる・ひろがる・深まる~

・この単発の合同企画については、構成団体がこの分野にあって実績を以て長く活動されており、その組織同士のネットワーク化によって、各団体がよりエンパワメントされる意図が感じられ、有園基金の助成金趣旨に合致していることで評価が高かった。
・ネットワーク型事業の遂行にあたっては、ヒューマンエフォート(※4)の面で、それぞれの本体事業に負担が出ないよう、各種ITツールを用いた連絡の取り方、必要にして充分なミーティングの持ち方など、合同事業による相乗効果が出るよう、効率的・効果的な運営の仕方を工夫されたい。
・その上で、各団体の持味・強みを活かした事業として、講演会など実施の際は、阪神南県民局や阪神北県民局管内の行政トップなどに効果的なPRを行い、公的補助への理解を促す機会となることを期待する。
※3 【4団体】=(特活)性暴力被害者支援センター・ひょうご、 (特活)男女共同参画ネット尼崎、(特活)フェミニストカウンセリング神戸、(認定特活)女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ
※4 ヒューマンエフォート:マンパワーの代替語(マンパワーは差別用語扱いになっている)

採択団体選評(新規団体)

団体名 :(公社)ひょうご被害者支援センター
事業名 :性暴力被害者からの電話相談スーパーバイザー育成事業

 新規に申請された「性暴力被害者からの電話相談スーパーバイザー育成事業」は、有園基金の趣旨には合致している。満額で採択された。
 有園基金は他団体や機関同士の連携も重視しているので、電話相談員のスーパーバイザー養成を法人内の人間だけでするのではなく、外部の人も積極的に受け入れて、地域の他団体と連携した取り組みを期待したい。具体的には、兵庫県内で同様の活動をしている団体との連携強化、地域や外部とのかかわりをもった組織のエンパワメント、地域における共同性などを育んでいく取り組みが重視される。当団体内部だけで完結するのではなく、兵庫県下で活動する他団体とのネットワークを強化していくためには、活動内容をよりわかりやすく開示する試みや連携する機会を作るといった前向きな努力を求めたい。
 また人材を育成していくための方法論が具体的に示されていないため、どんな人材を育成したいのか、どんなプログラムなのかがわかりにくい。申請内容は、受講した人と指導する人の人件費と交通費が大半だが、それが社会にどのように還元されていくのか、団体としての組織力アップのためにどれほど成果があるのかが見えにくい。中間発表では、こうした成果をどのように報告するのかを工夫していただきたい。そして有園基金を活用したスーパーバイズによって、相談員が何をどれだけ習得したのか、外部に分かるような形で可視化をしていただきたい。

団体名 :(特活)ぴっぴ
事業名 :育てにくさをもっている子どもと保護者を支援することで虐待の発生予防を行う為の人材育成・組織強化

 特定非営利活動法人ぴっぴは、1995年の開設以来、神戸市西区の住宅地において、〈いつでも、誰でも、どんな理由でも、利用できる保育所〉を基本方針に、地域に根差した子育て支援事業を展開してこられた。スタッフの大半が地域住民で、また法人として地域活動等にも積極的に参加されてきたことで、地域から理解と協力が得られ、法人に対する安心と信頼につながった実績を持っておられる。現在は認可外保育所と神戸市小規模保育事業所を運営されている。
 子どもの虐待はさまざまな要因が複雑に絡み合って起こると考えられており、さまざまなリスク要因を持つ家庭への支援が必要である。法人は活動を通して、子育てをしにくい子どもに対する親の悩みを実感、今後、発達に不安を感じる子どもを抱える親への対応や子どもの療育を行う、児童発達支援事業所の開設を計画されている。
 今回の申請では、法人スタッフが、子どもの人権擁護や虐待予防に対する知識を深めるとともに、子どもの療育や保育方法について学ぶための各種研修を実施するものである。スタッフの人材育成により、今後ますますの地域に根差した子育て支援と虐待防止の輪の広がりを期待している。

団体名 :(特活)いちごの会
事業名 :DV被害、虐待被害、性暴力被害経験のある依存症者の回復支援に関する研究事業

 「いちごの会」は1999年に設立され、アルコール依存症者を対象に、日中活動プログラムや相談支援、居宅支援など、依存症からの回復支援及び福祉の増進に関する事業を通しての障害者等不特定多数の利益の増進に向けた活動を行ってきた団体である。団体の所在地は大阪市東住吉区であるが、兵庫県内では尼崎でも活動を展開している。尼崎においても地域の団体と連携を密にとり、地域に根差した活動を展開している団体である。
 今回、「有園博子基金」にはDV、虐待、性暴力等生活歴の中に被害体験を持つ依存問題を持つ人々の回復ニーズを明らかにするための研究事業を申請された。
 助成金を生かした調査は、これまで、実践経験からは感じられていた「依存症からの回復において逆境体験を持つ人々が抱える阻害要因」を、今回統計手法を用いた調査の実施、分析を通して明らかにすることが期待される。
 一方で、申請内容からは研究の内容および研究の実施計画について不確定な部分が多いように見受けられた点もある。今後はアドバイザーの支援を受けるなどしつつ、計画を早急に具体化し実施していただくことをお願いするとともに、今回の研究成果を兵庫県においても還元していただけることを期待している。