加古川みらい基金 第4期 選評

<選考委員長総評>

                              選考委員長 吉富 志津代  
2015年にスタートした団体助成事業「輝け加古川こども基金」は、これまでの子ども・若者分野の活動支援から、4期目は「輝け加古川みらい基金」と名称も新たに、男女共同参画にも分野を拡大しました。今回は、基本コースに16団体(2団体が辞退)、発展コースに10団体の応募がありました。

今年度、新しく選考委員長を拝命し、加古川で多くの市民活動が生まれていることに感銘をうけつつ、審査をさせていただきました。


選考審査を始めるにあたり、まずはこれまで選考委員を務めてこられた方から順に、選考委員全員が事前評価で気づいたことなどを中心に情報交換をした後、個別の団体について、各コースの評価基準に則ってじっくりと各委員の意見交換をする形で評価していきました。すべての応募団体の選考を数時間かけて行いました。


その結果、基本コースは11団体、発展コースは6団体の採択を決定しました。基本コースは減額採択が3団体、そして増額を提案する形で採択された団体が1団体ありました。発展コースは、6団体のうち減額をされなかった団体は1団体となりました。基本的には、活動をしっかりと実施するためには減額をしない方がいいと考えるものの、予算の数字の詳細を確認することによって妥当性を判断した結果の具体的な減額だと考えられます。

各団体の選考理由詳細については別に記述がありますので、ここでは総合的に印象に残ったことをお伝えしたいと思います。

まず、団体に増額を提案して採択するという考え方は、地域に根ざした基金ならではの判断だと実感しました。団体との顔の見える関係性を築き、日常的な活動の状況を把握しているからこそ、そのような対応が可能なのではないかと思い、あらためて中間支援機関の支援のあり方を考えさせられるものでした。

そして、発展コースの新しい試みとした3年継続助成について、いずれの団体も認められなかったのは、3年間の計画において継続の必要性を具体的に示すという点が弱かったように思います。また伴走支援についても、伴走支援そのものの内容を十分理解した上で希望されているようには見受けられなかったため、認められたのは1団体にとどまりました。この点については、基金の今後の募集に際しての課題とも言えると思います。

それから、今回は活動の対象分野を広げたにもかかわらず、あまり男女共同参画をめざす活動団体の応募がなかったことは、少し残念でした。子ども・若者を対象とした活動の必要性と同様、男女共同参画社会をめざす活動も求められていますし、そのような問題意識を感じて活動に着手される団体が増えることも大いに期待したいと思います。

最後に、採択された団体の活動が、これを契機にますます発展することを応援するとともに、残念ながら採択されなかった団体については、十分な再考とともに来年度の挑戦を心からお待ちしております。

 


<発展コース採択団体選評> ※選考委員からの選評です(2018年2月1日)

団体名:特定非営利活動法人 日本アニマルセラピー普及協議会
事業名:アニマルセラピー活動参加犬のレベルアップと充実及び
    加古川市立加古川養護学校に於いてのアニマルセラピー活動
<選考理由>
 アニマルセラピーは、心身の健康増進や治療、教育などに効果が期待される動物を伴った訪問活動のことをいう。日本アニマルセラピー普及協議会は、10年以上にわたって、アニマルセラピストやセラピー犬を養成し、訪問する活動を展開している団体である。
 本助成事業には、既に始まっている加古川養護学校でのアニマルセラピーの授業を、小学部だけでなく、中学部・高等部に拡充するために申請された。加古川養護学校では、既に小学部の授業の一部にアニマルセラピーが取り入れられており、障がい児の心理面・身体面等で様々な効果が見られており、学校側からも期待されている。今後、この活動を長く継続していくためにも、新たなセラピストの養成をするとともに、広く加古川市内に普及してほしい。
 しかし一方で、加古川養護学校での取り組みは、一教員の熱意によって拡充しているように見受けられたことは、選考委員会の中で課題として挙げられた。また、育成したセラピストが、養護学校だけでなく新しい活動場所へどう展開していくのか、そのための試みなどが見られなかったことは残念であった。これらの理由から、今回は不本意ながら減額採択となった。
 今後、他の教員の拡がり、学校全体への取り組みにつながっていくこと、育成したセラピストが、様々な場所で広く活動を展開していくことを期待したい。


団体名:特定非営利活動法人 ささゆり会
事業名:重度障害児の社会参加支援事業、重度障害児についての研修事業、
    重度障害児の啓発事業、ピアサポート事業
<選考理由>
重度障害児の社会参加を目指し、重度障害理解の啓発活動やピアサポートをされている団体である。
 今回の申請には、①重度障害の子どもたち自身の社会活動、②介護・支援者の特に性に関する知識を得るための研修活動、③当事者と保護者の相談活動、④ボランティア参加を呼びかける啓発活動があげられている。
 委員の評価として、現在まで安定した組織による運営が実施されていること。また、マイノリティの方々の社会的認知度を高揚させる社会活動であること。啓発部分を大切にし、多くのボランティアを巻き込むためのきっかけとして助成金を活用されたいこと。等の意見があった。
 障害児者の生活が地域やボランティアを巻き込んで、人生が豊になるように企画運営をされ、継続して工夫と実践をされたいと願う。


団体名:一般社団法人 加古川音楽療法研究会
事業名:〜映像と音楽が心に及ぼす影響〜②
<選考理由>
活動として「音楽療法コンサートを実施し・・・その際に心身に及ぼす影響を考察する」とあることを評価した。過年度では演奏に関わる楽器や機材の購入に助成してきたが、今回は演奏会そのものへの助成申請である。これには審査員の中で賛否が分かれたが、団体名にあるようにいよいよ研究の分野に踏み込んでいくための申請とみて助成することとなった。よってどのような研究をし、どのような研究成果が明らかになったかという研究報告がなされることを期待する。音楽療法の必要性が社会に認識され、活動が益々広がっていくために意義ある研究が行われることを望んでいる。


団体名:ボーイスカウト加古川第5団
事業名:集まれ!未来の若者たち。
<選考理由>
世界的組織であるボーイスカウト活動も歴史を積みかさね、国内における子供の健全育成に貢献してきた。しかし徐々にではあるが家庭環境の変化や時代の変遷に伴い役割も変わってきている。その役割の変化に柔軟に対応しながら加古川第5団は地域における子供育成や世代交流に注力を続けてきた。

 本事業の野営場整備においては、本来は公共事業での整備が求められるが、貴団体の力と経験において民間活力による整備事業としては非常に意義のある事と認められ、地域住民の場として整備がなされる将来性が含まれていると推察できる。本事業においては助成を有効に活用できる事業である。
 また、地縁活動が縮小傾向にある社会において、貴団体が野営場整備と野営場活用の事業において、それらの社会課題の解決へ向けての一石を投じ、加古川地域における青少年活動を通じての地域づくりや人づくりの醸成を期待する。
 一方で、明確にしなければならい部分は、どのように地域住民を巻き込んでいくかで有り、具体策においては今後の検討課題として判断し、今回においては単年助成とする。このことは、事業計画の見直しを求めているのではなく、ボーイスカウトと地域、また、野営場と地域との関係性をより密着させていく事を次年度以降の計画に具体的に盛り込む必要があるとの判断であり、次回の申請につなげて欲しい。


団体名:特定非営利活動法人 One Heart
事業名:子ども食堂の発展とNPOの基盤強化へのチャレンジ事業
<選考理由>
昨年の発展コースの助成を進めていく形での今回の発展コースの申請の中で、特に注目させていただいたのは、伴奏支援として基盤強化を上げている点である。団体自信が自らの長所短所をきちんと見据え、さらに先へと進んでいこうとする強い意思を感じた。

 申請の前に、個別相談も受けられ、今のままではこの先の3年後、5年後の組織についての不安を感じていると話をされた代表の思いをメンバーに受け止めてもらい共有することは、活動を続けていく上でとても大切なことと感じた。
 代表の熱意と発想、そしてバイタリティによって、人やものが集まってきている印象が有り、組織強化のためにメンバーがどのように活動を捉えているか、感じているかを共有する場作りを行うこと、考えるためのきっかけになること。そのために伴奏支援を利用することが今のこの団体にとって、とても重要と思えた。
 そのため、申請中では、今後の事業に必要な家電調理用具や松本、東京など遠方への研修が含まれておるが、これらの経費を削減し、まずは伴奏支援に重きをおいた形での活動を行ってもらいたい。また、2年目、3年目の内容についても明確でないため、単年度で組織強化に重きを置いた上でメンバーと話し合いを行い、次の計画を立ててもらいたいという意味で単年度採択とした。
 子ども食堂自体の意味合いは、貧困対策の側面から地域の拠点に変わりつつあるなかで、より多くの選択肢を子どもたちが自ら選び取れる環境が必要。そのためにも、この地域の子ども食堂の草分け的存在であるわんはーと子ども食堂が、継続的に運営を続け、一つでも多くの子ども食堂の立ち上げ、それらの子ども食堂が活動を続けていけるよう支える事のできる支援団体的な位置づけとして、地域を牽引していくためにも、代表の熱い想いとそれを受け継ぐ多くのメンバーが精力的に活動を進めていくことを期待する。


団体名:加古川てらこや
事業名:加古川てらこや事業
<選考理由>
地元の歴史や伝統文化を未来にむけて子どもたちに伝えようということ、さらに主催者が直接子どもと関わるのではなく大学生にまず趣旨と内容を享受してもらい、その大学生と協力して子どもたちに伝えようとする活動は「みらい基金」の趣旨にも合致し、高く評価されるところである。しかし、大学側からの教材費などは見込めるのではないか、兵庫大学生に限るのは視野が狭いのではないか、多くの企業主に協力を仰げるのではないか、思想的な偏りがあるのではないかという不安を払拭できない・・・などの意見が出て、大幅減額の20万円と査定することとなった。多くの大学生や高校生をリーダーに迎えることで活動の輪が広がり、地域の企業などから支援を受けることで地元に根ざした活動となることを期待する。助成金を受けなくても継続できる活動が可能になるような財政基盤をつくることを目指していただきたい。