インタビュー

認定NPO法人 東灘地域助け合いネットワーク インタビュー

在宅高齢者へのお弁当の配布と、非接触で楽しむ三世代交流

~社会がどう変わろうとも、住民同士の助け合いの大切さは変わらない~

 

理事長の村山メイ子さんに、お話をうかがいました。

東灘地域助け合いネットワークは、どのような団体ですか?

 1995年の阪神・淡路大震災の直後に設立され、震災ボランティアとして東灘区全域の安否確認、心のケア、生活支援、コミュニティづくり等をしていました。
 最初は公園にテントを張って活動していましたが、区役所の中庭や仮設住宅など活動場所を何回か移しながら、1999年に市場の1店舗を借りました。現在は市場の空き店舗5カ所を拠点に事業を行っています。

 活動は、7名の事務局がコーディネーター役となって、約100名のボランティアの皆さんと一緒に、日常生活支援、茶話やかサロン(生きがい対応型デイ)、ふれあい食堂、リサイクル店「たすけあい」、子どもカルチャー、茶話やかカルチャー、地域情報誌「東灘ぱらボラ」など、地域に必要なさまざまな居場所づくりをしています。放課後デイサービスは市場から少し離れた場所で行っています。

とてもたくさんの事業をなさっていますね

 たくさんの事業をしているのは、地域の中で課題があるとそれに対応して新事業を始めてしまうからですね。収益の見込みにくい事業をたくさん抱えるのはもうやめないと、と思うのですが「またやってしまった」ということが多々あります(笑)。

 私たちは、住民同士の助け合いや生活支援を地域の中で進めています。地域から困難なご相談や依頼が多く、できる限りお断りをしない姿勢をとってきました。何かの専門家ではありませんが、長年活動をしてきた中で、地域になくてはならない団体になってきたのかなと思います。

コロナの影響はいかがでしたか

 私たちは「人が集う」ということがとても大切だと思っていて、震災の教訓から、嫌なことも、嬉しいことも、悲しいことも、何でも人と話して共有できる「場」を作ってきました。
 そして、それを切っ掛けに元気になり自立した人が、次に困った人を今度は自分が支えようと思えるサイクルを作りたいと思ってきました。

 コロナではそのこと自体がリスクになると言われたわけで、それでは私たちは何をしたらいいんだろうと当初は本当に先が見えない状況でしたね。
 これまで私たちは、高齢者を対象に週5回「ふれあい昼食会」、月2回「ふれあい夕食会」と「子ども食堂」、そして一般介護予防事業で毎週火曜日に昼食を提供してきましたが、2月より全ての食事会を中止しました。

 そのことで、自粛期間中に認知症状が現れた方、食事がないため居場所に来なくなり、家に閉じこもった方など、様々な影響が出ています。また、せっかくのボランティアさんの出番がなくなり、居場所に来る目的を見失なってしまうということも起こりました。

「支え合い基金」の助成で、どのような活動をしていますか

 今回の助成ではこのような課題を解決したいと考え、「在宅高齢者にボランティアによる手づくり弁当を配布し、同時に子どもと高齢者がメッセージカードのやり取りを楽しむことで、三世代が交流する事業」を行っています。
 ボランティアさんが作ったお弁当に、子どもがメッセージカードをお母さんに手伝ってもらいながら書き、それを一人暮らしや、ここで食事が出来なくなった高齢者の方に届けるというものです。

 また手紙をもらった高齢者から手紙の返事やサンタの折り紙が届いています。折り紙は男性も女性から教えてもらい、上手に折れるようになりました。お弁当も高齢者と子どもが一緒に配達するようになりました。 

 私たちも、このような三世代をつなぐ取り組みは初めてのことだったのですが、自分の祖父母ではないお年寄りに手紙を書いたり、自分の孫でははない子どもへ手紙を書いたり折り紙を折ったりする“ふれあい”が互いの楽しみになり、手作りの温かさが物としても残っていくことは、とても良かったと思っています。

 最近、何だか事務局が忙しくなったなと思ってよく考えると、何人もの手紙をきちんと保管して、お相手に届ける作業が思いのほか大変だということが分かりました(笑)。でも、この活動は続けていきたいですね。

今後の活動をどう考えていらっしゃいますか?

 子どもカルチャーの事業では、コロナの影響で参加する子どもの数は減りました。ただ習字やそろばんのように「その場所に行かないとできない」性質の活動は子どもが戻ってきている一方で、英語のような「どこの場所でもできる」性質の活動はまだ戻ってきていないようです。
 そのような状況をみると、一部の活動は今後リモートも考えた方がいいのかなと思っています。

 ただ高齢者の方はリモートを導入しても限られた人しか活用できないという問題やその限界があります。これまで私たちは、社会の変化とともに活動を見直して活動をしてきました。
 それでも、コロナの問題があるからリモートを全面的に導入しようということにはならないと思っています。

 マスクをして三密を気にしながらも、ここに来ることを楽しみにしている高齢者の方を見ていると、私たちのやるべきことは「顔を見てお話をする」という今まで通りのことなんだろうと改めて思います。

 効率は悪いかもしれませんが、皆さんがお顔を見ながら話したり、食べたり、笑ったりする場所を作っていくことが、コミュニティの再生を目指してきた私たちの役割かなと思っています。

最後にメッセージをお願いします

 これまでは大震災の前と後というような話をしていましたけれど、それと同じくらいコロナ禍の前と後では本当に変わってしまったと思います。ただコロナで社会がどう変わろうとも、住民同士の助け合いの大切さは変わらないでしょう。

 専門家でない私たちは、現場で活動につまづき、そこで考え、そこから立ち上がる事の繰り返しでした。だからこそ、私たちのような活動は強いんだろうと思います。
 震災のあと私たちは空き地に「さわやかテント」という場をつくり、そこで被災したときに怖かったことや将来の不安を語り合いました。それが居場所の原点になっています。私たちはそんな活動を、これからも続けていこうと考えています。

団体HP https://hnw.or.jp/