インタビュー

認定NPO法人 日本災害救援ボランティアネットワーク インタビュー

コロナ禍における災害、防災救援活動

~小さくても多様なつながりを作っていくことで、今後も災害に立ち向かっていきたい~

 

事務局の荒木正澄さんに、お話をうかがいました。

日本災害救援ボランティアネットワークは、どのような団体ですか?

 私たちの団体は、1995年の阪神・淡路大震災の際に全国から駆けつけてくださったボランティア、被災地域のボランティア団体、西宮市が連携して結成された「西宮ボランティアネットワーク」を前身に、1996年に名称を改称し新たに活動をはじめました。

 震災で学んだ教訓を全国に発信するとともに、災害時にはさまざまなボランティアやボランティア団体、行政、企業などに呼びかけて被災者支援や被災地の復興活動の支援を行い、平常時には防災や減災にかかわる活動を主に行っています。

荒木さんは、なぜこのお仕事についたのでしょうか

 私自身はまだ入職して1年目です。阪神・淡路大震災とときには5歳でした。入職のきっかけは2018年の大阪府北部地震でした。
 震度6を記録したこの地震のときは交通やインフラが止まってしまい、私も、家のタンスが倒れたり玄関の靴箱が倒れて玄関から外に出ることができなくなるなどの体験をしました。

 同じように被災した周りの友人や職場のスタッフと助け合いながら活動をする中で、それまでになかった一体感や、それほど親しくなかった人とのつながりが出来ていきました。
 この体験を経て、災害大国の日本で自分は何ができるのだろうと考えた結果、この仕事に就くことになりました。

コロナ禍の前後には、どんな活動をしていましたか

 2019年10月に、主に東北地方や関東地方で台風19号の大きな被害がありました。その被害を受けた長野県の被災地域を対象に、バスをチャーターし一般のボランティアさんを募りながら一緒に支援活動を行いました。
 兵庫県からは遠いのですが、距離があってもボランティアさんが支援しやすいように、ボランティアの間口を広くすることも目指しました。

 1月には、毎年「チャリティカレンダー市」という企画を西宮で行っています。これは企業などに余っているカレンダーを寄付していただき、その販売収益を被災地支援活動に活かすというものです。
 3月に入ってからは、当団体も活動が制限されてきました。大きな災害のないときには、防災のための講演活動や子どもたちへ体験活動をしているのですが、それらが8月くらいまでストップしてしまいました。

 今年の「令和2年7月豪雨」では九州を中心に大きな被害を受けてしまいました。Go toキャンペーンで県外の移動が活発化しはじめたこともあって、9月と10月にコロナに注意しながら少人数で支援活動に入らせていただきました。
 コロナ禍の影響で県外だけでなく県内のボランティアも少ない状況だったため、大変喜んでいただくことができましたが、このような状況下で一般のボランティアの方のネットワークをどうつくるかが課題となりました。

「支え合い基金」の助成で、どのような活動をしていますか

 コロナ禍でもできるボランティア活動を考え、「水没してしまった写真を洗浄する」という災害支援活動に一般ボランティアの参加を呼び掛けています。
 最初は難しく感じますが、水没写真の洗浄はコツさえつかめば老若男女を問わず誰にでもできる作業です。

 九州の水害による水没写真の洗浄作業を、西宮市と津市をインターネットでつないで一緒に作業し、さらに静岡大学と連携して西宮市、津市、静岡市の3つの市の合同で行い洗浄の方法をレクチャーするなどの試みも行いました。
 この取り組みには、被災地に行かなくても支援が出来るということに加えて、災害があった事実を再認識し、災害への関心の度合いが高まる利点があります。 このようなボランティアの間口を広げる試みとネットワークづくりの双方を、今後も充実させていきたいと思っています。

 災害支援に関心のある高齢者の方も多いのですが、インターネットへの対応が難しい場合も少なくありません。zoomを使ってみたところ、参加者のネット環境のこともあって上手く活用することができませんでした。ここがいまの課題となっています。

今後はどのような活動を予定していますか

 当団体は防災活動について、「地域に根ざして長く行う」ことを目標にしています。その一環で「まちごと防災プログラム」という企画を予定しています。
 このプログラムでは実際に、ハザードマップを見ながら危ない場所や安全な場所を地域の方と一緒に歩きながら目にし、当団体の理事やスタッフと座談会を通じて、様々なニーズに合わせた独自の防災活動をお伝えし、活動していくという、より地域と密接に関わっていくプログラムを目指しています。

 しかしコロナ禍による影響でその活動が難しくなりました。その中で地域の危ない場所や安全な場所をスタッフが実際に歩き、その様子をリモートで配信し実際に集まらなくても防災の知識が身につく「リモート散歩」という企画を計画しております。
 この企画を通じて新型コロナ感染症予防に努めつつ、地域の皆様と防災への知識を深めていきたいと考えています。

最後にメッセージをお願いします

 防災活動という面で見ると、コロナ禍であっても行うことは通常時と変わりません。災害が起こった際に何が一番大切なのかというと、やはり「人と人とのつながり」です。
 そのつながりは、地域社会はもちろん、震災ボランティアがきっかけになることもあると思います。仮に西宮に災害が起こったときに、それまでつながりのあった他県の方が助けてくれることがあるかもしれません。

 いまはコロナの影響で「人と人とのつながり」が薄くなる部分もあると思います。だからこそ、小さくてもいいので多様なつながりを作っていくことで、今後も災害に立ち向かっていきたい。そして今後も変わらずに人と人のつながり、助け合いの気持ちを大切にしたいと考えています。

団体HP http://www.nvnad.or.jp/