しあわせな未来は、わたしが選ぶ。 共感寄付

未来を築く「すまみらい」

はじめまして。ボランティアレポーターの田浦彩子です。

神戸育ち神戸在住で、今は外資系工業部材メーカーで営業事務をしています。阪神淡路大震災をきっかけに高校時代からぼちぼちボランティアをしていましたが、社会人になってからは足が遠のいていました。

そんな時に今回のレポーター募集が目に留まり、NPO・市民活動の「今」を知ることのできるよい機会だと思い、応募しました。地域にあるはずの問題を、実際に地域でどう解決していくんだろう・・・そんな思いを持つ市民の一人として、活動の実際を見て聞いて感じたことをお伝えできればと思います。

10月6日、精神障がい者を支援する団体「すまみらい」(神戸市須磨区)の活動について、施設長の鏡味さんと、4年目の職員村岡さんにお話を伺いました。

板宿商店街の一角で同団体が運営する雑貨&café amico。店内は天井まであるガラス窓から優しく光が入り、鮮やかな色づかいのポストカードなどお手製の雑貨が丁寧に並べられています。店員たちは静かにおしゃべりしたり、お客さんが来ると「いらしゃいませ」と明るく出迎えたり。意識しなければ「精神障がいを持っている」人たちのお店だとは思わないかもしれません。

利用者(こころの病、障がいを持つ仲間)は神戸市内の名谷・長田エリアを中心に、遠くは大阪市内から来ています。ブログやfacebookによる積極的な情報発信によって、今では月一回ペースで新規利用の相談もあり、これはかなり高い頻度なのだそうです。

「働くこと」を支えたい

今、力を入れ始めたのは就労移行支援事業。平成21年10月から開設された就労移行支援事業所「ぷろろーぐ」では、定員6名でビジネスマナー講習や、体調に関する経験談を語り合うミーティングから、実習や実際の就職活動までを支援しています。「なかなか働く場が見つからないのは、社会にとってもったいないこと」と村岡さんは話します。「短時間だったり、週三日といった配慮さえあれば、普通に仕事をできる人がたくさんいるんです」。

しかし一方で、ニーズとしては一般就職希望が多いのに対し、受入れ側の理解を得るのが難しいという現状があるそうです。

地域の理解を広げるための活動の一つに、こころの病に関する啓発活動があります。利用者たちで制作した絵本を市内の大学・高校に配布したり、依頼を受けて職員や利用者を講師として派遣し、絵本の読み聞かせや経験を語るのです。特に学校での活動は、非常に発症率が高いとされる10代の人たちが病をしるきっかけとなります。また、経験を話すことが利用者自身の回復の助けになると同時に、講師料収入にもつながるという面も併せ持つそうです。

当日、amicoの向かいにある作業所「すまいる・フレンズ」ではバザーが催されており、所狭しと衣類や日用品が並べられ、恒例のチキンカレーには人の輪ができていました。鏡味さんと村岡さんは別々にお話を伺ったのですが、お二人とも同じ言葉を話されていたのが印象的でした。「みんなで楽しそうにしていると見えていたらいいな」(村岡さん)、「楽しければいいかなと思う」(鏡味さん)。普段作業を終えてから皆で近所を散歩するのだという利用者も「本当は歩くことよりしゃべることが楽しい」と笑顔でした。しかし、こうした言葉の裏には、こころの病や障がいを持つ人たちにとって「楽しい」と感じられる場を持つことがいかに難しいかという現実があるのではないでしょうか。

まちの未来を築く

来年で開設30年。家族会のある方は「何がきっかけなのかわからないまま病を受け入れ」「部屋を借りるにもずっと障がいを隠し続けなくてはならなかった。」「今息子に居場所があることは本当にありがたいことだと思う」と話されました。長きにわたりこころの病や障がいを持つ人たちとその家族を支え、地域と積極的に関わり発信を続ける「すまみらい」の活動の意味が、そこにすべてあるように感じました。

現在の課題は、社会への働きかけと日々の作業所活動の両立。活動に対する「共感寄付」というシステムへの期待は大きいと言います。寄付の数は、ともに生きようという思いの数でもある。今まで目に見えていなかった課題への気づきが、まちの未来の築きになるのではないでしょうか。

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