インタビュー

ひょうごラテンコミュニティ インタビュー

住みやすい日本をつくるためのプロジェクト

~南米出身者や日本人が中心となって、さまざまな情報発信や生活相談、企画などを続けていく~

 

 

大城ロクサナさんと工藤真樹さんに、お話をうかがいました。

ひょうごラテンコミュニティ(HLC)は、どのような団体ですか?

 阪神淡路大震災時の外国人被災者へのサポート活動をきっかけとして設立された団体「ワールドキッズコミュニティ」を母体として2000年に活動がはじまり、2011年から独立した団体になりました。
 南米出身者や日本人のメンバーが中心となって、日本在住のスペイン語圏の方の生活の向上を進めたり、地域社会への積極的な参加を促すことを目的に、さまざまな情報発信や生活相談、企画などを行っています。

 具体的には、毎週水曜日に「FMわぃわぃ」で放送しているラジオ番組、全国に1万2千部を無料で発送しているスペイン語情報誌「Latin-a」の制作、スペイン語圏にルーツを持つ子どものための母語教室、電話による生活相談、SNS発信などをしています。

 毎年7月には、「フィエスタ ペルアナ神戸」という企画もしています。1000人規模の無料イベントで、協力してくださるスポンサーや助成金集め、アーティストや場所の手配など、すべてボランティアで運営しています。

 12月に行っている「ラテンクリスマス神戸」は、日本人の方の参加が半分くらいになっています。2019年には、スペイン語圏コミュニティの方が楽しみながら防災を学ぶ企画も取り入れました。

防災の取り組みにも積極的ですね

 日本のスペイン語圏コミュニティの多くで、日常的な防災の意識や対応策がありません。もしも南海トラフ地震が起こったら、日本語が分からない多くの方が亡くなってしまうのではないかと心配しています。

 私(大城さん)が阪神淡路大震災で被災したときにも、日本語がまだ分からず大変でした。日本語が理解できないから何にもできないという状況ではなく、スペイン語の防災情報が事前にあれば自分の命を守ることにつながると思っています。
 そのため「Latin-a」では年に2回は必ず防災の記事を書くようにしています。またスペイン語の防災ガイドを県の助成金をいただいて兵庫県内に300冊、そして他の助成金をいただいて10,000冊を作成して全国に配布しました。

 それに伴って、スペイン語の防災セミナーを県内と愛知、大坂、京都で開催したところ、南海トラフ地震について聞いたことがなかったという方が大勢いらっしゃいました。その後、助成金でスペイン語での防災ビデオを全国で初めて作成し、現在は台風や大雨の防災について次の防災ビデオを作成中です。

とても多くのことをなさっていますね、どのように活動しているのでしょう

 HLCのコアメンバーは大城と工藤の2人で、いろいろな協力をしてくださる皆さんと一緒に全員ボランティアで活動しています。
 日常的に関わるメンバーが2人なのは少ないと思われるかもしれませんが、ボランティアの皆さん自身の日常生活が大切ですし、みんな仕事をしなくてはいけないので、大変ですがこの体制で進めています。

「Latin-a」は、HLCで日常的に相談を受けたことの中からコミュニティに必要とされているだろう事例、出入国在留管理局の情報、健康の問題、コロナの情報などを取り上げ、大学の先生など専門家の皆さんにも協力いただきながら、年に11回発行しています。

 全員がボランティアで30人位がかかわりながら、全国27都道府県のお店、個人、総領事館、会社など、500ヵ所くらいにお送りしています。「Latin-a」はフリーペーパーなので、製作費は広告収入でまかなっています。
 コロナの問題が起こってから、これまで支えてくださっていた企業などのスポンサーが半分に減ってしまいました。ひょうご支え合い基金の助成金も「Latin-a」を継続するために活用させていただきました。

コロナ禍でどんな影響がありましたか

 スペイン語で日本のコロナ禍の情報を手に入れることは難しいため、「Latin-a」では九州在住のペルー人のお医者さんにお願いして、今年の2月3週からずっとコロナの情報を出しています。
 感染症の予防、「三密」など日本の専門用語の翻訳、その他の情報を、フリーペーパー、HP、ラジオ、SNSなど、あらゆるところで発信しています。
 ただ、コロナの危険な情報ばかりだとパニックになるので、日常生活に必要な情報も加えて、コロナに負けないメッセージを出すように心がけています。

 日常的に受けている相談では、コロナ禍で失業したが日本語が分からないのでハローワークに行っても再就職ができない、コロナに感染してしまって家族で食べるものがない、ペルーに一時帰国したら日本に戻ってくることができなくなったなど、これまでにない問題が増えてきています。
 相談内容を聞いても、私たちでは対応できないケースがあって、私たちも精神的に重くなってしまうことがありますね。

 また、コロナ関係で私たちの仕事がとても増えてしまっていて、普段の活動が2人だけだとかなりハードになってきていることも課題です。
 そして、ボランティアの力で「Latin-a」の原稿をつくることは出来ても、印刷や配布をするための費用がスポンサーの急な減少で難しくなっていることが、いまの最大の問題になっています。
 全国的なスペイン語のコミュニティ情報誌は「Latin-a」だけなので、支援をしてくださる先を探して、何とかこれからも継続していきたいと考えています。

最後にメッセージをお願いします

 私たちは、これからもコミュニティサポートと情報発信を続けていきたいと思っています。
 少なくとも2021年はコロナ禍とともに生きていかなくてはならないでしょうから、スペイン語圏コミュニティの人たちが元気に生活していくために、注意深い情報発信をしていきます。

 2021年の「フィエスタ ペルアナ神戸」開催は行わない方向ですが、スペイン語圏の子どもたちのための母語教室は続ける予定です。
 防災の情報もコミュニティの皆さんにお伝えしないといけないので、することがたくさんありますね(笑)。

※HLCではスペイン語情報誌「Latin-a」を続けていくため、賛同してくださる日本企業のスポンサーさんを探しています。ご関心のある企業や、ご紹介くださる方はぜひ下記までご連絡ください。

団体HP https://www.hlc-jp.com/ 

E-mail:  hlc.jp.info@gmail.com 

〇この活動への支援は、宗教法人真如苑のご寄付により実施しています