第9期(2025年度)助成事業一覧
応募状況
応募件数 | 採択件数 | |||
---|---|---|---|---|
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
全体 神戸・阪神 神戸・阪神以外 |
12件 8件 4件 |
¥3,600,000 ¥2,400,000 ¥1,200,000 |
8件 5件 3件 |
¥1,280,000 ¥830,000 ¥450,000 |
採択団体一覧
神戸・阪神
団体名 | 事業名 | 金額 |
---|---|---|
マサヤンタハナン Masayang Tahanan | フィリピン移住者の暮らしを支える相談窓口事業 | ¥300,000 |
HANS Tree | 日本の子育て制度「わからない?」から「わかった、安心!」になる寄り添いサポート | ¥200,000 |
(特活)ガルーダ・ジャパンコミュニティ | 在留外国人の生活環境改善推進事業 | ¥150,000 |
(特活)日本語とエクスチェンジの会 | 移民難民・教育弱者の方への日本語学習およびキャリア支援事業 | ¥100,000 |
Arts For All | HAPPY AFRICAN FESTIVAL | ¥80,000 |
小計 | ¥830,000 |
神戸・阪神以外
団体名 | 事業名 | 金額 |
---|---|---|
にこにこ日本語教室 | にこにこ日本語教室① にこにこ日本語教室② 地域との交流活動 |
¥200,000 |
(特活)りとるめいと | 外国籍の親子支援 | ¥200,000 |
(一社)さんサンにほんご | 未来へつなぐ日本語教室&学習サポートプログラム | ¥50,000 |
小計 | ¥450,000 | |
合計 | ¥1,280,000 |
総評
選考委員長 武田 丈
真如苑・ひょうご多文化共生・外国人支援基金は、1936年に東京都立川市に開祖の伊藤真乗によって開かれた真如苑が、2016年より「ひょうごコミュニティ財団」と協働して行っている助成事業である。最初の3年間は子ども貧困や孤立などの問題に取り組む団体への助成であったが、2019年からはこれまでの取り組みを進化させつつ、テーマを多文化共生や外国人支援の取り組み、とりわけ貧困や暴力、差別に苦しむ人々への支援に資する取り組みを優先的に助成することを目的としている。兵庫県内で活動する団体を対象としているが、2025年度は過去2年度同様に続きこうした活動に対する支援があまり十分ではない神戸・阪神間以外(播磨・丹波・但馬・淡路地域)の活動を助成総額の半分程度採択することとして公募を行った。
応募団体の総数は12件で、事務局による予備選考を通過した10件が本選考に進んだ。本選考に進んだ10件のうち、神戸・阪神以外の地域の団体が3件、神戸・阪神地域の団体が7件であった。これら10の団体が、2025年2月27日に開催された選考委員会における質疑応答に臨んだ。選考委員会では5名の審査委員からそれぞれの団体に対して約12分間の質疑が行われ、いずれの団体も非常に重要で熱心な活動を展開されていること、苦労しながらもさまざまな工夫や努力を行いながら組織やプログラムを運営されていること、地域のニーズに対応したさまざまな活動を行っていることが確認できたが、慎重な審査の結果、8件(神戸・阪神以外の地域が3件、神戸・阪神地域が5件)が採択された。残念ながら採択に至らなかった団体は、計画性がやや不十分であったり、活動の継続性に不安があったりしたが、地域の外国ルーツの人たちにとって不可欠な活動を行っておられる。こうした活動が引き続き行われることを願うとともに、来年度に本助成に再度チャレンジされることを期待する。
末筆ながら、申請書の整理や適切な選考委員会の準備及び進行を担っていただいた事務局とともに、応募されたすべての多文化共生や外国人支援に取り組まれている団体に謝意と敬意を表する。
選評
神戸・阪神
団体名 :マサヤンタハナン Masayang Tahanan
事業名 :フィリピン移住者の暮らしを支える相談窓口事業
当該団体は、フィリピンにルーツを持つ外国人県民が相互に助け合い、地域との交流を通じて安心に暮らせる生活環境づくりを推進する目的で2015年に設立された。
当初はフィリピン人コミュニティーをベースに、日々の暮らしの中での母語による情報交換や有用な情報共有の場であったが、日本で生活する上での様々な課題や困難に協力して対処し、2022年からは定期的な相談窓口を設けて、電話や面談による対面相談やSNSの活用など利用者の利便性にも配慮し、他の支援団体とも協働するなど、より安全で安心かつ効果的な生活基盤の構築に貢献している。実際に、近年では活動拠点である神戸市内のフィリピン人は若干減少しているが、相談件数は年々増えており、活動の必要性と信頼度の高いことが認められる。
しかしながら、相談担当者数や活動時間や要する経費共に限られており、団体の自助努力のみで今後も事業継続すること難しい現状であり、当面の支援が必要と認められる。
また、基盤としての相談事業に留まらず、様々な企画行事でフィリピン文化を紹介するなど地域との繋がりと相互理解の促進も行っており、多文化共生の視点での地域社会づくりに積極的に取り組んでいる点も高く評価する。こうした活動が多文化を背景とする地域住民の安定した生活環境と住みよい地域づくりに継続して貢献することを望む。
団体名 :HANS Tree
事業名 :日本の子育て制度「わからない?」から「わかった、安心!」になる寄り添いサポート
当該団体は、これまで三田市や北神エリアを拠点に、日本語教室の運営を中心に外国人住民向けの生活相談や食料配布なども行う中間支援のための団体(「NPO場とつながりの研究センター」)で活動していたメンバーが、若い世代の在住外国人の増加する地域の現状に鑑みて2024年暮れに新たに立ち上げた組織である。
対処すべき現状課題として、急激に増える外国人住民で、若年家族を帯同する世帯や当地で出産が想定される世帯も増え、異文化の地での子育てや教育の不安や不自由が想定され、これらを軽減・解消する支援を積極的に行うことにより、安全で安心な生活環境の構築につなげる活動を積極的に行っていくことを計画している。
年々増加する在住外国人の実質的な受入れ対象は「働き手」が中心とされるため、世帯として伴う児童・生徒・幼児や家族を守る母親としての存在も取り残されがちになる。人が働き、活動し生活する上での世帯要員みなが地域につながりを持ち、安心して暮らせる基盤づくりに真摯に向かい合って取り組む姿勢を評価する。
団体名 :日本語とエクスチェンジの会
事業名 :移民難民・教育弱者の方への日本語学習およびキャリア支援事業
申請団体は、1997年にボランティア団体として設立され、2020年にNPO法人化した後も、一貫して日本在住の外国人と日本人の間の友好と相互理解を目指し、日本語学習支援、異文化交流、生活支援等の活動を行ってきた。今回の申請もそうした活動の延長であり、外国人の中でも日本語学習の機会の限られる人や、戦争や迫害から避難してきた人たちを対象とした、週1回(50分)の3か月のオンライン授業提供、および就労支援を提供するというものである。
ウクライナ避難民の受け入れ状況を考えても、また単に日本語学習支援だけでなく就労支援につながる日本語学習支援というのは非常に高く評価できる一方、週1回(50分)しかも3か月間のみのオンライン授業提供で就職に必要なレベルまでの学習効果があるのか、既存の日本語学習支援の活用の可能性といった意見も出され、今年度に関しては既存の日本語学習を活用することを期待するということで就労支援プログラムに対する限定的な助成とさせていただいた。
限定的な助成となってしまったが、有意義な就労支援を提供していただき、一人でも多くの外国人が就労、そして経済的自立されることを期待する。
団体名 :(特活)ガルーダ・ジャパンコミュニティ
事業名 :在留外国人の生活環境改善推進事業
在住インドネシア人が地域で安心して暮らせる環境整備を目指し2022年に設立され、理事にもボランティアにも日本人と当事者であるインドネシア人の両方が関わって活動されています。
今回の申請事業である地域交流活動、在留者ボランティア育成、初めての冬あったかフェアについても「支援された側が今度は支援する側に」という、当事者が地域社会で支援者として活躍する方向性を明確に打ち出しておられ、評価されました。
一方、質疑応答では、2023年度の当助成採択事業の外国人当事者アンケート調査の結果をその後の活動にどのように活かしてこられたか、そして今回の申請事業にどうつながっているか、事業の連続性が問われました。大学、行政、地域と協力し在住外国人とのつながりをもとに調査活動をされたことは大きな強みです。その力を今後の事業の連続性や展開に有効に使い、中長期的な事業継続につなげていかれることに期待します。
団体名 :Arts For All
事業名 :HAPPY AFRICAN FESTIVAL 2025
Arts For Allは、もともと2015年にアフリカのトーゴでCie Arts For Allとして設立され、伝統的なアフリカンダンスを通じた異文化理解・交流によって多様性理解の促進や社会的包摂に寄与することを目的としており、日本でも2021年より隔年で開催されている。
申請プログラムであるHAPPY AFRICAN FESTIVAL 2025では、さまざまなプログラムを通して、アフリカの文化紹介、文化交流、多様性尊重の啓発だけにとどまらず、人種差別という日本ではなかなか語られない課題に焦点をあて、当事者自身が代表をつとめ、芸術を手段として地域をつなぐというコンセプトは高く評価できる。ダンスを中心としたアート・パフォーマンスやパレードは文化交流や多文化共生の第一歩としては非常に有効であるが、人種差別やマイクロアグレッションといった課題に立ち向かうためにより多くの人に具体的にこうした課題について考えてもらう、自分事として捉えてもらう工夫がされればさらに素晴らしい活動になると思われる。今後も、こうしたアートを活用した活動を通して人権課題に取り組まれることを期待する。
神戸・阪神以外
団体名 :にこにこ日本語教室
事業名 :にこにこ日本語教室① にこにこ日本語教室② 地域との交流活動
2004年の設立以来、20年以上の長きにわたり、東播磨地域で外国人児童生徒への学習支援や在住外国人の相談事業を続けてこられました。
昨年、一昨年に続き同内容での申請ではありましたが、質疑応答において申請事業の必要性・重要性が再確認されました。日本の経済・社会状況がさらに厳しくなるなか、多くの外国人児童生徒やその家族は生活難や社会的苦境に陥っています。そのような状況においても外国人児童生徒が未来に希望を持ち「日本社会で持てる能力を存分に発揮できるようになってほしい」という代表者の熱い思いが地域社会に広く伝わり、この大切な事業が今後も継続していけるような新たな手立ての検討がなされるよう願っています。
団体名 :(特活)りとるめいと
事業名 :外国籍の親子支援
多文化共生をテーマとした、外国人支援の取り組みを事業の主旨の他、活動の参加者や支援者からの視点や活動の継続性等の視点等も加えて選考がなされました。本事業は、既に地域で実施されています、児童の健全育成事業や子育て支援事業からニーズをとらえて計画がなされ、対象者の国籍を問わずに子育て支援や異文化交流活動の実践を試みる、スタートアップに近い側面であることも議論されて採択されました。
交流活動や相談活動から支援活動を展開していくには、言葉や文化の課題もクリアしていかなければならないことが予測されますが、是非、兵庫県北部エリアでの多文化共生活動の展開を、他のNPO団体との協業等も工夫しながら広がることを期待しています。
貴団体の活動が多岐にわたることから、上述のように、今後の活動展開において、組織や活動の専門性を捉えなければならないことや、事業運営の継続においては、種々の活動の参りとるめいと加者数の計画や推移等の分析、ご寄付等の自己資金を得ていくための工夫も必要になってくるかと思います。イベントの参加者を参画者として捉え、担い手の確保と事業の継続が実現されることも期待しています。共に生きる社会をつくる活動が益々発展されることを祈念しております。
団体名 :(一社)さんサンにほんご
事業名 :未来へつなぐ日本語教室&学習サポートプログラム
多文化共生をテーマとした外国人支援の取り組みを、事業の主旨の他、対象のニーズや実情を把握し、それに基づいた計画がなされているか、又団体の実施能力や経費の設定や継続性等の視点も加えて、様々な観点から選考がなされました。本事業は、学習の質の向上も捉えて、個々の支援に継続的に実施していくことの計画や参加者の将来の姿を見据えた、活動の提供を考案され、設立間もない団体の士気も伝わってきました。
特に今年度は、実践をしながらの貴団体の活動の方向性を再確認してくことや地域の団体、学校との連携、活動参加者や支援者との関係づくり等、活動の展開が多岐に広がることと思います。
活動対象者の地域における人数や実態の調査も含めて、事業内容の調整が必要になる場合も予測されますが、新たに生まれた団体の地域で根が張り、芽がでて広がることを期待しています。事業のスタートアップにおいては、様々な資金の獲得に努められており、事業開始のご準備もご苦労されたことと思います。まずは、活動地域の対象者との関係構築に努められることや活動を軌道に乗せていく事に努められ、共生社会の芽生えが実り豊かになることを祈念しております。