第3期 組織応援コース 選考結果

ひょうご・みんなで支え合い基金

2025年度組織応援コース

 市民活動・NPO への助成は、ほとんどが活動・事業への助成です。活動への助成ではなく、皆さんの組織の成長を応援するのがこの「組織応援コース」です。
 忙しい毎日の中、組織内部のコミュニケーションや人材育成のような組織にとって大切なことを後回しにしたまま、活動に追われ続けることも少なくありません。また創設メンバーや一部の理事・事務局だけの少数による活動となり、多くの人を巻き込めないままコアメンバーが疲れ果ててしまう例もよく見聞きします。
 このコースは団体の足元を見つめ、足場を固めるための取り組みに必要な費用を助成し、支援を行うものです。

応募状況

応募件数 採択件数
件数 金額 件数 金額
組織応援コース 13件 ¥3,471,000 4件 ¥800,000

採択団体

組織応援コース

団体名 事業名 金額
(特活)西脇てとて広場 「子どもの居場所」安心安全ガイドラインの作成と理解 ¥182,000
(特活)IPPO 地域におけるNPO法人IPPOの役割を軸にした組織基盤強化 ¥168,000
(特活)育ちあいサポートブーケ 組織基盤強化事業 ¥250,000
からとの未来を考える会 神戸市北区唐櫃地域におけるコミュニティプラットフォーム構築 ¥200,000
合計 800,000

総評

選考委員長 早瀬 昇

 本基金の「組織応援コース」は、いわゆる組織基盤助成です。この「組織基盤助成」は、事業による課題解決などの成果を求める「事業助成」と異なり、組織自体の基盤強化を進める活動に助成するものです。助成の成果が見えやすい事業助成と違い、主に組織内部の体制強化を目指すため、外から成果が見えにくくなります。そのため税金を原資とする自治体の補助金などはもちろん、民間助成財団でも、実施例はそう多くはありません。
 しかし、今回、その組織基盤助成を実施することになりました。「事業助成」で資金を得た事業を遂行するため目の前の活動に追われるなか、活動の土台となる組織の体制がゆらいでしまうことも少なくありません。組織基盤助成は、この課題を克服する一助になると考えたからです。

 さて、今回の「組織応援コース」は、他の助成事業と同様、2024年11月6日~12月19日まで約40日で応募団体を公募。その結果、13件(うち新規申請8件)の申請をいただきました。1件の助成上限30万円、助成総額80万円という事情もあり、事務局で一次審査を実施。8件に絞った上で、審査員が事前に申請書類を読み、評価点や確認したい点を整理。その上で2月25日に8団体とオンラインによるグループヒアリングを実施しました。

 その結果、報告のとおり、4団体に総額80万円を助成することとなりました。助成を受けた団体に関しては、柏木委員と村上委員の選評をご覧いただくので、私からは今回、残念ながら選に漏れた団体について総括的にコメントします。
 まず、この種の助成では常にあることですが、助成を得た団体と選に漏れた団体の差は、わずかな場合が大半です。助成総額が決まっている以上、相対評価とならざるを得ず、わずかな差で当落が決まります。ですので、選に漏れた皆さんは、どうか落胆されすぎず、次の機会での再挑戦をお願いします。

 では、何が差となったのか? 今回、助成できなかった団体の申請に対して審査員からは、経常費用が安すぎるなど提案された計画で目標が実現する説得力が弱い、事業計画や資金計画の記載が乏しい、組織応援というより事業助成に見える…などのコメントがありました。要は目標である組織基盤の改善に向けた具体的な道筋が見えにくかったことが差となったわけです。
 助成も寄付も、信頼して資金を託すもの。託したいと思える計画を練り、助成金や寄付も得つつ、事業を進める団体が増えてほしいと思っています。

選評

団体名 :(特活)西脇てとて広場
事業名 :「子どもの居場所」安心安全ガイドラインの作成と理解

 申請団体は、生きづらさを抱えた0歳から18歳までの子どもとその家族に対し、子どもの居場所及び子育て支援に関する活動を通じて、精神面だけでなく多方面から支援することに取り組んでいます。
 本申請は「子どもの居場所」安心安全ガイドラインの作成と、その共通理解を目的としたワークショップを開催するものです。勤務日や活動日が違うために、関係者の情報共有の機会がないという運営状況によって起こっている、子どもを預かる際の安全安心(防災・防犯・事故・個人情報・その他トラブル)についてスタッフやボランティアの共通理解が弱いという組織課題に対して、解決に向けた明確な取り組み示す申請でした。
 特に、ガイドラインの作成だけでなく、共通理解のためのワークショップを盛り込み、さらにこの取り組みが当該団体だけでなく、今後開設される他の子どもの居場所の運営マニュアルとしても機能することを見据えている点が、地域全体の子ども支援の質向上につながる可能性があると評価されています。作成するガイドラインが「作ったこと」だけで終わらないよう、内容のみならず、読みやすさや見やすさ等のデザイン性にも意識を向け、広く活用される生きたツールとなることを期待しています。


団体名 :(特活)IPPO
事業名 :地域におけるNPO法人IPPOの役割を軸にした組織基盤強化

 申請団体は、長年にわたり文化芸術を通じた障害児・者の社会参画及び子育て支援に関する事業を行ってきた。ボーダレスの活動であり、公的支援がない中での運営に難しさがある。
 家庭の経済力、障害の有無等に関係なく、誰もが自由に利用できるフリースペースの確立をめざして来たものの、具体的な方策がないまま今日に至っている。
 申請内容は、事業の将来像の明確化を目的とし、法人組織のあり方や活動の理念などの再確認と、法人としての方向性をクリアにしていくことが計画されている。アイディア出しに終わらず、1年間かけて伴走支援者のサポートを得ながら、組織全体で取り組む企画である。
 役員及びスタッフ各人が、自身の関わり方を実感しながら参画できる内容であり、地域にとっても有益な方策と考えられる。従来、必要性を感じて検討を重ねて来たものの、未解決のまま推移した課題に関し、今回、具体的なチャレンジへの方策が組み立てられたことが評価され助成が決定された。計画に基づきミーティングの回を重ねる毎に、ステップバイステップで課題解決への方途が明確になり、所期の目的が達成されることを期待したい。


団体名 :(特活)育ちあいサポートブーケ
事業名 :組織基盤強化事業

 申請団体は、親子の育ちあいをサポートする子育て支援事業に取り組んでいる。属人的だった事業運営のあり方を改め、組織的な運営体制への改善努力を続けてきたが、さらなる改善の深化を目指して当助成金を申請した。すなわち、事務局業務を個人としてではなく組織的に担うことで、安定感ある体制とすべく、持続可能な強い組織づくりのための申請である。
 具体的な取り組みとして、「①間接事務業務の変革(専門家のアドバイスと新システムの導入) ②発信の強化(ホームぺージの改良)」の2テーマに関する計画が提出された。
 審査では、この2テーマのニーズは理解できるものの、同時期に並行して進めることの是非が検討された。資金と労力の両面で厳しいのではないかという見解が生じたためである。 
 議論の結果、事務所を持たず事務作業がほぼボランタリーに進められている現状の変革をより急務と捉えることとした。即ち、従来の改善努力の進化を目指して、①に絞った助成金を提供することを結論とした。結果、②に計上されていた予算額は削除させていただいた。
 申請書からも前向きで意欲的な方向性が窺える団体であり、本助成事業による改善活動の成功が心より期待される。


団体名 :からとの未来を考える会
事業名 :神戸市北区唐櫃地域におけるコミュニティプラットフォーム構築

 申請団体は、婦人会・自治会をはじめとする各地域団体や住民有志で構成し、住民意見のとりまとめや、地域団体や住民と連携した地域イベントの開催などを行なっています。
 本申請は、アドバイザーの支援を受けながら組織体制・運営方法のあり方を再考し、会としての中期計画を策定するとともに、新たな住民参画手法の構築を目指すことに取り組むものです。活動に関わる人材の不足という組織課題に対し、住民有志のまちづくり団体である会の特性を踏まえ、複数回の住民ワークショップや住民アンケートを計画的に開催することで、地域住民の地域への関心を高め、新たな活動の担い手確保につなげていこうとする点が評価されました。
 また、目の前の課題や業務に追われ、場当たり的な活動になってしまいがちであるという組織課題に対して、中長期的な戦略やビジョンを描くという内部メンバーだけでは難しい部分に外部アドバイザーの存在を効果的に活用していこうとする点も本助成の趣旨に合致するものです。一方で、団体の常時活動や通常経費は本助成の趣旨からは外れるものである点は留意してください。申請団体が地域の新たな担い手を増やし、持続可能な地域活動のモデルを創出していくことを期待しています。