採択団体訪問: NPO法人NGO神戸外国人救援ネット
今回は、NPO法人NGO神戸外国人救援ネットの事務局の村西優季さんにお話を伺いました。NGO神戸外国人救援ネットは、過去、当財団の有園博子基金や真如苑・多文化共生基金の採択団体ですが、現在では、2025年にリニューアルした「共感寄付」の参加団体であり、現在3期目を迎える団体です。

※「共感寄付」とは?
共感寄付とは、社会からの寄付に支えられて活動をしたいという想いを持った、参加団体とひょうごコミュニティ財団とが一緒になって市民から寄付を募り、地域の課題に取り組む、寄付募集と助成のしくみです。寄付を広く募ることで、単にお金を得るだけでなく、地域の課題をみんなで共有し、参加団体の活動を支える気持ちのある「志金」(寄付)の循環をつくることを目指しています。
ーー共感寄付は団体にとって役立っていますか?
もちろんです。寄付集めは、団体独自でも行っていますが、なかなか集めることは難しく、ニュースレターを年に2回出し、そこに共感寄付の振込用紙を付けさせて頂いています。
ーー3回目の共感寄付ですけど、夏までに200万円という目標を掲げていらっしゃいますが、工夫してまた次も続けようというお考えですか?
実は神戸市の補助金が今年度(2025年度)は、ひとつ不採用になってしまいまして。というのもやっぱり外国人支援をしている団体も増えてきて、一方で助成金・補助金といった支援団体が活動資金にあてられる財源は限られています。今年度予定していたものが取れなかったので、その分を補うために、夏以降も共感寄付は継続する予定です。
ーー共感寄付もリニューアルとなり、これまでと違うところも感じていただいていると思うんですが、何かこうしてくれたらもっとありがたいというような要望とかかありますか?
PRは自分たちで頑張らないといけないのですが、もっと救援ネットを知らない人にも届いてほしいなと思っているので、ぜひコミュニティ財団のネットワークで共感寄付全体を押し上げてもらえたらありがたいなと思っています。
ーー少し歴史を遡って、設立の背景を聞かせください。震災の時に出来たと聞いてますが。
1995年に阪神・淡路大震災があって、神戸の街に住んでた外国人の方、外国ルーツの方も被災して。ただ当時はやっぱり多言語での情報発信とかネットでの情報収集とかそんなことがまだまだだったので、どこに避難したらいいのかとか、どこに行ったら物資がもらえるのかとか、そういうこともわからないまま被災して困っている方々がおられました。
その方々に向けて、もともと神戸で外国人支援の活動をしていた団体が集まって、救援ネットというネットワークを作って多言語で情報発信をしたりとか、あと、95年の夏には多言語の電話相談会をやったりして、最初は被災した外国人住民の方への支援というのが始まりですね。あと弔慰金、義援金、医療費が一部の外国人に渡らない、例えば震災の直前に在留期限が切れオーバーステイになったから対象外ですとなった方もいらして、そういう方の問題に取り組んでいったというのが始まりです。
その後も外国人の方からいろんな相談が寄せられたので、ずっと相談支援活動を継続して30年を迎えたという感じです。
ーーそれから30年と長いんですけれど、特に最近外国の方が困っておられるようなことはありますか?
フィリピン人女性からの相談が多くて、特に日本人男性と結婚して日本で子育てもしていたけれども、DVとか色々あって子どもを連れて離婚したいというような相談を受けることが多いです。離婚やDVの相談が非常に増えてきています。また、外国人同士のご夫婦の相談も増えています。
フィリピン人女性の場合は子どもが日本国籍を持っていたりとか、本人も日本での生活がそこそこ長かったりとか、日本語が多少話せる方も多いです。また、離婚後の在留資格の変更や生活保護申請などの支援ができます。けれども、外国籍同士の夫婦の場合は日本語がそんなにできない人、生活保護が申請できない在留資格だったり、離婚した後にも引き続き日本にいることができるのかは、ケースによって異なっており、支援する側も制度の壁にぶち当たってしまうような相談っていうのが最近増えてきているなと思います。
難民申請関係の相談だと、アフリカとか中東から日本に来て難民申請してる人も多いです。そうなるとフランス語やアラビア語の通訳者が必要になります。
救援ネットの場合、通訳者はあくまで通訳業務に専念してもらうので、相談の支援の組み立ては相談員がついています。とは言え相談員は3名程度で、毎月15件程度の新規の相談が入り、その1件ずつを数カ月かけて対応しているのが現状です。書類の書き方が分からない等のシンプルな相談もあれば、緊急性の高い相談、複雑な相談もあります。連携している弁護士さんは20名程おられ、弁護士以外にも多くの専門家の方に支えて頂いており、それぞれ得意分野をもっておられます。謝金については、通訳者への謝金で手一杯で専門家の方々にはボランティアで助けて頂いているのが実態です。
ーー救援ネットさん以外にもそういう外国人支援団体さんは、たくさんあると思いますが、他団体との連携は取られていますか?
外国人コミュニティの方から相談を受けることも多いです。神戸もラテンのコミュニティとかベトナム人のコミュニティとかフィリピン人のコミュニティとかあるんですけど、それぞれが実施している相談電話によせられる物で、込み入ったケースだと、こちらに問い合わせがあることがあります。コミュニティ団体と連携して対応しています。それ以外にも様々な外国人支援や国際協力を主体に活動され、相談も受けている団体はありますが、相談に徹して、且つ、弁護士など専門家と連携して取り組んでいるのは、救援ネットだけかも知れません。
ーー日本にいる外国にルーツを持たれた方々にとっては、正に最後の砦ですね。外国人の方、居住者の方から見て、日本って居心地いいんでしょうかね?
外国人同士の夫婦の離婚やDVの相談を聞いていて、離婚した後に救援ネットに来る相談者は真っ先に『もう国に帰ります』とは言わないんですよね。子どもが日本で生まれ育っていたり、自分の国に帰ったら子どもへの教育がきちんと保障されてないとか、国に帰ったら戦争があるから帰れないという場合もあり、日本に残りたいっていう方が多いんですよね。でも支援してる側からすると、どんどん法律が厳しくなってきてこれからどうなっていくんだろうってすごい心配しています。
ーーでは、その日本の多文化共生のあるべき姿について、感じて居られることはありますか?
確かに労働力不足の状況下、外国からの労働力に頼るという側面はあります。ただ、そのこと自体が問題ではなく、その人たちも生きている以上、様々な問題に直面します、そうしたことを放っておかないことが肝要ですね。留学生についても、国として受け入れを標榜するのであれば、留学生を支えるシステムもセットで整えていくことが大切だと思います。決して受け入れている大学等の教育機関だけの問題ではないと思います。
ーー救援ネットとしての将来像についてはどうでしょう?
設立から30年が経ち、世代交代の波が来ているのをひしひしと感じています。新たなメンバーの参加や外国にルーツを持つ方も、以前は支援される側であった人が支援する側に立つようになる等、新たな形、体制を志向していかねばと思います。(後日、救援ネットの総会と30周年の集いが開催され、理事長の交代が発表されました)
ーー寄付を考えている方へメッセージがあればお願いします。
外国籍や外国にルーツを持つ方は、ここ最近、突然現れた訳ではありません。以前より日本で暮らし、日本社会に貢献されてきた人がおられ、そこに若い方や働き手として新たに日本に来られた方々が加わりました。人口的には増えているのですが、多くの皆さんが日本に役立つことを考えながら生活している。ただ、生活している以上、結婚したり生活環境が変わったりします。困りごとがあったり、病気をしたり、トラブルに巻き込まれたりすることもあります。救援ネットは、そうした人達を支えるべく活動しています。是非、お力を貸して頂きたいと思います。
冒頭ご紹介の通り、「NGO神戸外国人救援ネット」は、当財団が運営する「共感寄付」の参加団体です。救援ネットの活動にご賛同頂ける方は、是非、共感寄付のウェブサイトよりご寄付をお願いします。共感寄付のウェブサイトはコチラから
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