採択団体訪問: デモクラティックスクールまっくろくろすけ

今日は、(一社)デモクラティックスクールまっくろくろすけさんに伺い、黒田喜美さんと横田美空さんからお話を伺いました。
「デモクラティックスクール」とは、サドベリーバレースクール(アメリカ・マサチューセッツ州・1968年設立)と同じ教育理念で運営されている学校のことを指します。シュタイナー教育やモンテッソーリ教育等とともに「子どもの自主性や創造力を尊重することに重きをおいた」教育のひとつとして世界的に注目されています。「まっくろくろすけ」は日本で一番古いデモクラティックスクールです。

ーーまずは、ここの設立の背景・動機などをお聞かせください。

1997年に、まっくろくろすけが始まりました。きっかけは私(黒田)が大学生になった時です。小学校、中学校、高校に通っている時は、単に嫌な先生がいるとか何も理由のない校則があって嫌だなとか、反対にいい先生も友達もいて楽しい、そういうふうに思ってただけだったんです。大学生になって、当時を振り返って、そもそも日本の子どもの成長への考え方や教育行政の仕組みとかが、根本的に違うから問題が発生していると考えるようになりました。じゃ、どういう教育が本当は必要なのかなって考えた時に、このデモクラティックスクールの考え方に至りました。

大学を卒業してから神戸YMCAに勤めてたんですけど、神戸YMCAにある方が講演に来られて、それを聞きました。1980年代半ばから日本にも、市民が理想の教育を作ろう、親たちが学校に合わない子のためにもっと別の教育の場を作っている、いわゆる「フリースクール運動」が始まっていることを知り、自分が一人で勝手に思ってたことが、外国では長いこと実践されていたり、日本でも始まっていたりするんだと知り、自分もぜひそういう生き方をしたいなと思いました。

そこから何年か経ってから、デモクラティックスクールが自分がまさに考えていることだなと思って、実際に始めました。

さらに具体的に言うと、ひとつは当時もいろんなフリースクールはあったんですが、まだデモクラティックスクールは実現していなかったので自分で始めたいと思ったこと、ふたつめは当時のフリースクールはどちらかと言うと、中学生、高校生で不登校になったとか、年齢の高い子が多かったんです。私は小さい頃から自分の好奇心が摩耗しないような学びの場をしたかったので、自分で始めました。

ーー朝は何時からとか決まってるんですか?

9時50分から開いているんですけど 好きな時間に来ていいので、人それぞれ来る時間が違います。帰りも何時でも人によってバラバラ 最終だけ決まっていて、17時45分となっています。朝はゆっくりで帰るのは遅い子が多いですね。

ーー今、子どもたちは何人くらいいらっしゃるんですか?

メンバーといって毎日来る子は30人弱で、ビジターといって不定期でたまに来る子が15名ぐらいですね。

ーー「子どもは自ら学び育つ」というポリシーのもと運営されていて、先ほども子どもが主体的に進める「終わりの会」を見させて頂きましたが、特殊なものでは、「裁判」みたいなものがあると伺っていますが、それも子どもが主体でなされているのでしょうか?

たまに開かれるんです。それが重大案件とみなされた時にあって、日本の少年法の理念と同じで罰を与えるというのではなく、問題行動がなくなっていくのを助けるということです。ひどいことをする根本が何かを考えたり、こうすれば変わっていくのではないかと考えたりします。例えば何回も盗みをするとか、何回も暴力行動を起こすとか、1回でもあまりにひどいこと言ったのに反省がないとか、そういう時には「裁判」が開かれます。日にちを改めて行われるので、お互いに証人を探したり、うまく自分が喋れない場合は、被害者の子どもは手伝ってもらう人を探すとか、訴えられた子も自分ではうまく言い分や弁護できなかったら親しい子に協力を頼むとか、お互いに準備したかったら準備ができます。その時は当事者はもう投票権がなくて、裁判長と書記とあと裁判員の人たちがジャッジして無罪になることもあれば有罪になることもあります。あまり頻繁に行うわけではありません。

始まった最初のきっかけは、アメリカの海外ドラマを見た子が、いつも注意しててもずっと繰り返してる子いるから、ああいう風な感じで真剣にもっとやったらどうだろうっていう提案をしたことです。そうやって、まっくろくろすけの「裁判」ができたんですけど、それからは子どもたちがもっとこうしたら良くなるねっていうのを積み重ねて、工夫して行ってきました。

ーーまっくろくろすけでは、卒業の仕組みがあるそうですね?

始まりは、21歳で辞めた人が卒業したいと言ったことです。それまではまっくろくろすけって単に辞めるしかなかったんですね。習い事みたいな感じですね。もう辞めますみたいな。その人はサドベリバレースクールの本を読んでいて、共感をして、この学校に入ったんです。社会人になるので、まっくろを辞める時に、「単に辞めるじゃなくて、自分は学び終えて、大人になって社会に旅立つという気持ちだから卒業っていうふうにしてほしい、サドベリーバレースクールでは自分の学んだことなどをプレゼンして、みんなに大人としてやっていけそうだっていうことが認定されて、卒業となる。そういう風に私はしたいです」と言って、それに対してみんなが「いいよ、そうしよう」って言って、プレゼンをして、そういう風になったんです。それがきっかけで『じゃあ単に辞めるのと卒業とどう違うのか』を自分たちでゆっくり考えましょうということになり、考えて今みたいになった感じですね。

ーーなるほど、これも子ども達の発案だったのですね。ありがとうございました。

自然豊かな環境の中、伸び伸びとした子ども達の姿が印象的でした。「子どもは自ら学び育つことができる」、子どもに無限の可能性を改めて感じさせられました。

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(一社)デモクラティックスクールまっくろくろすけ