採択団体訪問: こどもサポートステーション・たねとしずく

今日は、(特活)こどもサポートステーション・たねとしずくさんに伺い、代表理事の大和陽子さんにインタビューをさせていただきました。
たねとしずくさんは、すべての子どもたちが家庭環境等に左右されずに、子どもらしい時間を過ごし、自分の将来を選ぶことができる社会を目指して活動されています。
ライブラリーの運営、ひとり親世帯の家事支援、困窮家庭支援、学習支援などさまざまな取り組みを行っておられる団体です。

ーー今、ライブラリーや支援者支援などの事業を主になさっていますが、原点のようなものを教えて下さい。

2015年から別の団体を立ち上げ、子育て支援をやっていたのですが、いろいろ紆余曲折しながら産前産後の家事支援に落ち着きました。
しかし、両親がいても大変な産前産後なのにひとり親世帯だったらどうなんだろうということを思い始めて、ひとり親支援をやってみたい、でもお金がないので3年間ひとり親支援の補助金をいただきました。
そこで1年に25家族とか20家族をサポートさせて頂き、産前産後だけではなくもっと課題が絡みあって大変だということがわかり、今度は困窮ひとり親家庭に特化した活動にしたいという思いでやりはじめたのが2年前です。ただ、スタートしたときから子どもたちの居場所の構想はあり、2023年8月に「たねとしずくライブラリー」を立ち上げたという経緯です。

ーーたねとしずくライブラリーについて教えて下さい。

当初は今ほど家庭的な雰囲気にするつもりはなかったんです。なぜ家庭的な雰囲気にしようと思わなかったかというと子どもたちが、どの年齢層でも悩み苦しんだりとか経済的な問題だけでは無くて、体験格差があったりとか、それぞれある。ですからどの子でも来ることが出来る場所という風にすると、あんまりクローズのお家っぽい雰囲気よりは、ちょっとOPENな場所にしたいなという思いがありました。
そこで図書館だったら誰でも来ることが出来る、特別な場所・施設じゃないですよということでライブラリーという名前に落ち着きました。
週に3日開けています。

ーー年齢的にはどの層が一番多いですか?

中学生が一番多いです。あとは小学5~6年生の子と高校生の子が同じくらいです。

ーーいちおう高校3年生でサポートは卒業という感じですか?

昨年来ていた子で今も来ている子が何人かはいます。大学に行き始めて、ちょっとしんどかったりとか、新しい環境下でのコミュニケーションがちょっとしんどかったり、学校始まって最初しんどいみたいなことを言いに来たりとか、テスト前に初めてだからと勉強して帰ったりとか、一応10代の居場所ということにしているので、18歳、19歳までは完全に許容です。

ーー例えば虐待があるのではないかとか思う子がいるというのは、色々な会話の中で徐々になんとなくわかるのですか?

そうですね。話の中で出てきますね。子どもたちって結構ぱっと言ったりするし、ずっと言わないで我慢している子もいるし、日常的に家庭の中のことを友達同士で言い合っている子もやはりいます。おかしなことだと思わずに話す子もいます。子どもにとっては当たり前だと思っている子もいます。話を聞いて親に何かするわけではありませんが、ここで吐き出してもらって心のケアができればいいなと思っています。

ーーああいう場でも打ち解けられないとか、あの中でも孤立しちゃうという子はいるんですか?

そういう子はそもそも来ることができません。あとは特性が強くて他の子とコミュニケーションができないという子はいます。そういう子はスタッフとずっとしゃべっています。スタッフはどんな状態の子でもウェルカムで、本人が孤立していると感じないようにしています。

ーーそういう時はメタファシリテーション*は有効ですか?

もちろん使っています。メタファシリテーションって別に短い時間で聞くための技術ではないんですが、たくさん子どもたちがいるのでじっくり話すってなかなかできないですよね。そういう時にもすごく使える技術です。

*メタファシリテーション
メタファシリテーション®(対話型ファシリテーション)はムラのミライ創始者である和田信明が途上国の援助の現場で生み出し、現代表の中田豊一が手法として使えるように体系化したものです。聞き手(ファシリテーター)が話を聞く相手(当事者)との信頼関係を構築しながら、当事者自身が問題や解決方法に気づくよう会話を組み立てていく手法です。

ーー今年はスタッフの増員を目指して育成することが計画にあがっていますが、どうですか?

育成というのは難しいですね。いま来てくれているスタッフは良い子たちですが、なにせ大学入って20歳前後の子や社会人なりたてだったりするので、まだまだ自分たちのことでも揺れ動く時期です。それでいて誰かの面倒を見るという立場になっている人を私たちは育成する、やはり社会人を育成するというのとはまたちょっと違うのかなと思います
心の成長も伴いながら、また自分たちの団体自体ができて2年、しかもライブラリーがOPENしてまだ1年半、まだまだしっかりした内部の取り決めが決まっていない、支援方法の答えがあるものではないという中で、支援者を育成していくということなので、すごく難しいです。

ーー訪問支援をされるスタッフと、ライブラリーのスタッフと両方育成したいということだと思いますが、希望者で振り分けですか?

今後は振り分けになりそうですね。今ライブラリーに来てくれていて中心になってくれている子が訪問支援も入りはじめてくれているんですね。彼女には訪問支援の場合は子どもと接してもらいます。
2人で行っているので、親御さん担当と子どもさん担当と分担しています。子どもさん担当は難しい面もありますけど、中学生くらいになると相手が大学生くらいの子たちが活躍できると思っているので今後は学生もここに入ってもらいたいなと思っている、第一号として頑張ってもらっています。
ただ、家事支援の方が、課題が大きいご家庭ばかりなんですね。やはりそこは福祉的な知識があるとかじゃないとまず無理なんです。私たちとしても慎重に考えていますし、学生に誰でも行ってもらっていいというわけではないと思っています。
この仕事は、誰でもができる仕事でもないということ。それをどうすれば誰にでもできる仕事にできるかというのを考えていく、それを目指しているのです。

ーー各ご家庭で状況が全部違うし、なかなか難しいですよね。いろんな専門性も実際は必要だけどそれを前面に出してやるわけでもないので、場数も必要だし新しいスタッフはどのように勉強していくのかなと。OJTで一緒に教えてもらいながらということだと思いますが。

今は2名一組で行くのがうちのスタイルなんですね。要請支援だと必ず一人なんです。一人で60分、介護だと30分入ったりしますけど、私達は今本当に贅沢な助成金の使い方をしています。二人一組で入るという使い方をしているのですがこれは、OJTにもなりますし、バーンアウトしにくいというか。
要望が強い場合もあるし、逆に要望がわからない場合もある。そういうときはやはりその場の判断で行います。二人で行くことで相談出来たりしますので。
特に行政のものと違って審査とかはなしで行っているので、一人でいくと危険な目に遭う可能性もあります。
前の団体で私は産前産後の家事支援をしていたので、たくさんサポータがいたんですよ。産前産後の家事支援というのはある種幸せな仕事で、赤ちゃんがお家にいて沐浴させてもらって、というような内容で、1~2時間の仕事だったら主婦の方とか参加しやすい。
その方たちと一緒にひとり親支援も行っていたのですがやはり色々なスティグマがあったり、見えないものに対する恐怖があったりとか、なかなか理解のスタートが合わせるのが難しくて。
研修もしましたが研修だけではなかなか理解できないことがあるので、私たちの目的としてヤングケアラー防止、虐待防止、DVを受けた方の心のケアというような目的に沿った人に来てもらわないと、スタートがずれちゃうとなかなか難しいかな。やはりそのような社会課題を知っていたうえで来てもらう方であるのは前提にあります。

ーー子どもの居場所と家事支援訪問と連動させていきたいというようなことを、今年の目標としてかかげておられたのですが、そっちはどうですか?計画に沿っている感じですか?

一度にはできませんが、親と離れた場に子どもに来てもらう、家の中だけで付き合っていた関係では無くて社会との接点を持ってもらう、次のステップとして居場所というものがあると思っているので、私たちだけが行かないと出会わない場所ではなくて、そこは何度も行って信頼関係ができている次に、出てこようよという居場所を作るという感じなんです。 子どもたちには学習支援があるよ、食事があるよと言って来てもらったり、来ることが難しいなら迎えに行くよと。

社会課題を解決するひとつの力としてNPOが認められ始めている。ただ一方でうまく使われているというような面もある。どうしても、お金が付かない、一般企業に比べてNPO価格と言われている面もある。自分たちがやっていることを安売りしてはだめだと自覚し、自ら価値を見出し、また、それを提案もしていかなければならない。

ーー今期の目標の3つ目に支援者支援を上げて居られます。全国から応募もあって指導を行っていると聞きますが?

昨年度はムラノミライさんと一緒に、シングルマザーズフォーラムの助成金をいただいて、ひとり親支援をやっている団体さんにメタファシリテーションを使って支援力を上げてもらうということをやらせていただきました。そのときはムラノミライさんのメタファシリテーションと、うちがやっているひとり親支援のノウハウや視点をもってテキストを作りました。
もともと団体としてあんまり大きくできるとも思っていなくて、うちの団体はこれ以上のサイズ感にはならないし、かといって社会課題だったりとか行政の家事支援の在り方だったりとか子ども支援の在り方に対し、自分たちなりの提案も持っているということで、この小さい規模の中でできる範囲でやればいいとも思っていなくて、やはりこれを皆さんに真似してもらいたくて普及させたいという思いがすごくあるんですね。
それをするためには支援者支援は必要と思いますし、もともと自分たちでは支援者支援というのは団体の中の支援者の視点であったりとか、地域の中の連携というような支援者支援と思っていたのですが、でもやっぱりもう一歩、自分たちが継承していくというか。
今、子ども食堂ネットワークとか食糧支援のパントリー、今年度は他の団体にもパントリーをやってもらいたいと2~3団体くらい食糧支援の団体を増やそうと勝手に目標をたててやっているんです。
それもひとり親支援では、35~50家庭くらいに配るのが精いっぱいで。他のひとり親支援のネットワークとかは1回で500家庭くらい配ったりするんですよ。でもそれってそこのやり方だし、こちらは35家庭くらいのお顔が見えて、誰が熱が出たとか誰が進学したとかわかる範囲で支援していきたいというのがあります。
ですが、そういうやり方をしていたら西宮だったら2000家族以上のひとり親家庭があって困窮世帯を入れたらもっと人数がいて、35家庭だけやっていても全然足りないので他の団体でやってくれるところにお願いしたい思いで、少しずつ声をかけています。
パントリーをやるとか、ひとり親支援をしたり困窮世帯支援をしないといけないよねという風土を作っていけたらなと思っているので、単なる数というよりは動きをじわじわと絶たせないというか、なくならせないというかできたらなと思って、それを目標に結構粘り強くやらないとなと思っています。
前の団体の時にWAM助成をいただいたんですね。私はすごく生真面目なので、WAM助成の仕様書に「連携」って書いてあったんですよ。あ、そうか、連携しないとダメだと思って、でも連携団体が無かったので連携団体を作ろうと思って、計画書に連携会議しますと書いたんです。
連携団体が無いのに連携会議をやらないといけないという大変なことを書いてしまいました。で、年に2~3回しますと書いてしまったので、連携団体が無いのに3回やるってどういうことなん?って。
でも、行政の人にお願いします、来てくださいと言ったら、逆にみんなコロナの時期で会議が無かったから来たいといってきてくれた。人に会う機会がないから来たいですって、言ってくれたのです。
参加してくださったみなさんが、子ども食堂をやっているとか、高齢者施策をやっているとかいろいろな団体だったのですが、みんな互いに知り合いじゃなかったんですよ。
みんな名刺交換して初めましてって言ってるんですよ。そこで、皆さん連携せずに自分たちだけで支援してたんだとわかって、本当に連携は必要だと思って3年間頑張って連携会議を続けたんですよね。
そうしたら毎回毎回新しい団体さんが入ってくれて、やりやすくなりました。その後、WAM助成にこの連携会議で高評価をいただきました。私にしたら連携会議って全員書いて出すんじゃないの?って(笑)やっているところないですよって言われて。えーって。これ必須条件じゃなかったんですか?って。自分ではすごく背伸びしてやったんですが、他の団体がやってないということがわかって、それで3年間連携会議をやって、前の団体はもう辞めたので、連携会議は無くなったけどおかげで協力者も増えたし、実際パントリーを増やすとなったときも、ちょっとやってみようかという感覚もわかって、わざわざ会議をしなくても、声をかけられそうな人を見つけたりできるようになりました。

ーーすごいですね。無形のひとつの財産を築きました。

それが本当に良かったです。助成金のおかげで、やらなければならないことがわからなかったので、それがひとつわかったのがすごいよかった。
ライブラリーをOPENした1年目、内覧のお客さんがたくさん来てくれたのですが、子どもたちを紹介してくれるひとがとても多いんですよね。団体は変わりましたが、やっていることや意味はわかってくださっているので、ここはそういう主旨なので、紹介しても良いって。うちは早いうちから利用者がずっとコンスタントにいて、それは本当にWAM助成の連携会議のおかげかなと思います。

ーー最後に総じて「有園博子基金」のご感想とかどうですか?

これまで中間支援というところでの関わり、色々なところにお願いをしていたのですが、お金を頂きながら支援していただくというのは、なかなかないものでありがたく思っています。
特に基盤整備というところで着目していただいているのは有園基金だけなので、そこに自分たちも意識を集中して基盤整備の時期だなというところで使わせてもらっています。
さすがに団体も何年もやってきて、助成金の意味がようやくわかってきたところです。
最初のうちは助成金って自転車操業するための資金としていただいているという感覚でしたが、基盤整備だったり事業発展だったりのために使われないと意味がない、というのはすごくわかってきて、とはいってもなかなか上手に使えてないのですが。
基盤整備で使って良い助成金ってほとんどないので、昨年と今回といただいたことで、正真正銘、基盤整備で使わせて頂いています。例えば臨床心理士にスーパービジョンに入ってもらうとか、これってある種毎回のケース会議ではあるのですが、OJTみたいなもので、毎回のケースに対してどうやっていくかのを教えてもらうということになっている、それがすごい力になっている。
もともとは、もうちょっと心のケアの仕組みがあれば自分たちがバーンアウトしない、と感じていて当然そうなんですけど、今はもうそれ以上のものになっていて、バーンアウトするとかのレベルの話ではないというか、前は結構そこに意識があったんですね。
スタッフがよれよれになってしまうというのがあったり、でもよれよれになるというのはどう支援したらいいかわからないので、距離が取れないとかいうことがあったんですが、それを教えてもらうことでもちろん距離は取れているし、実際に利用者の方に付き合いの技術としてあがってというところで、間違いなくスタッフの技術と言うと変ですが、技術の向上になっているなと思います。
今年は夏に合宿の費用に使わせていただいて、普通の会社、一般企業って今でこそ合宿というのもあまりないんですが、社内研修がしっかりしていたりとか、コミュニケーションを取るためのイベント、夏になればみんなでビアガーデン行ったりとか当然あるものですよね。あれってただの文化ではなくて人とのコミュニケーションを取ったりとか合宿をすることで俯瞰した仕事が見えたりとか、必要性があるから一般の会社はやっているんだと思います。
でもNPOとかになると人が来ては、やめての繰り返しで、技術だったり思いが継承されていかないというか、そうではなくてそこでちゃんと成長してずっと継続した仲間として1年後、2年後、3年後も一緒に働ける仲間として、作っていくのがNPOも必要だと思うんですね。
そういったものにお金を使わせて頂けるということが本当にありがたくて、それだけではなくて他のユースセンターに1週間以上研修に行かせてもらうという、私たちも視察に行かせてもらう、運営側のスタッフも視察に行かせてもらう、そこにユースワーカーを研修で送り込むという賃金も払って研修の費用も払って、ということを有園基金にさせてもらって普通の社会一般のNPOだったらできないことを、させていただくことで、自分たちの力を作って2年目、3年目と私たちが継承して行ける形にできたらなと思っているので、そういう風に使わせて頂けているのはすごくありがたいですし、成果というか効果というか言葉にしにくいですけど感じていますので、本当にありがたいなと思います。

ーー我々も期待もしているので頑張って欲しいなと思います。

頑張ります。共感寄付も増えて行けばいいなと思っています。また、認定NPOにも挑戦したいと思っています。今年は全然バックオフィスが回らなくて、ほんと厳しいですが。

ーー様々な団体がありますが、支援者支援にも力を入れておられる団体たねとしずくさんのお話を伺えてよかったです。今後の活躍がますます楽しみですね。お忙しいところ貴重なお話をありがとうございました。