今回は、NPO法人多文化センターまんまるあかしさんにお邪魔して、お話を伺ってきました。
まんまるあかしは、外国人・外国にルーツを持つ家族への支援だけではなく、「国籍や文化の違いを壁にせず共に生きる未来」を目指し、多様な文化・習慣を持った人々が相互理解を深める事業や、国籍を問わず全ての人々が活躍できるための事業を行っている団体です。今日は、理事長の久保美和さんにインタビューさせていただきました。
ーーまんまるあかしのスタートのきっかけを教えて下さい。
もともと私は国際交流協会の職員だったんです。その時は、市からの委託の枠の中でしか支援活動ができなくて、委託の内容が「成人外国人が生活に困らないようにするための日本語教室」でしたので、日本語がある程度話せる人や子どもは対象外でした。
また、日本で生まれ育っていて学科の勉強に全然ついていけない子たちもダメです。
教室は、フリースペースでやっているので、小さい子を連れているお母さんって日本に来て親戚とか誰もいないから、預け先がないじゃないですか?でも、そういう子たちを連れてきて走り回ったらフリースペースの迷惑になるからダメ……という一番困っている人たちに手助けできてないなという思いがありました。
そこで、2015年に週一回だけそういう人たちのためだけの教室を作ってはどうかと今の副理事長の櫻江に声をかけました。
それから週1回2時から8時まで活動を始めました。お母さんたちのクラスを2時から5時まで、子供たちのクラスは5時から8時までと1年間、2015年の4月から1年間やってみて、人が来てくれるようになったら場所も狭くなって、また、他の曜日にはできないのかとか、決まった日だと用事があって来られないとか、色々なニーズが見えてきました。
それに、場所を借りているだけだと自分たちの居場所にはなれないから、ちゃんとした居場所を作って、たとえ、子ども達が学習日じゃない時にきても、「本読んで帰り!」と言ってあげられるような場所を作ろうと、NPO法人にして、場所も借りました。
きっかけは当時、日本語教室には参加していないけどイベントに時々来ていた小学校4年生くらいの女の子の存在です。
その子のお母さんが、国際再婚することになりました。お母さんは長い間日本で働いていて単身で来ていて、その時に出会った日本の男の人と結婚することになり、家庭を構えるから、子どもを呼び寄せることになったのです。
彼女は中国出身ですが、日本語も何も全然わからない状態で来日したので、一緒に生活しているお父さんも全然言葉が通じないし、学校行っても何いっているかわからない中で凄く頑張っていて。
私が知り合ってしゃべるようになったのは、日本に来て1年半くらいたってからなので、ある程度意思疎通はできていたのですがでもやっぱりなんかすごい辛い、毎日辛いとそれを見ていたら何かしてあげようっていう感じになったのがきっかけはきっかけです。そこからボランティアで日本語や教科学習を支援する教室を作って、NPO法人を作って、今に至ります。
ーー当時同じような悩みを抱えておられる子どもさんは結構多かったのですか?
そうですね、国際交流協会に勉強に来ていた日系ブラジル人のお母さんがいてたんですけど、お母さんは働き詰めだったので日本語をあまりしゃべれなかったんですけど、子供たちは日本生まれ日本育ちで逆にポルトガル語しゃべれませんという環境でした。
5年生の娘が算数が全然わかってないようだからと言われて、なんとかできないかと相談がありました。
でも、国際交流協会の活動時間の枠の中ではそれはちょっとできない、依頼元の意思に沿ってないからダメだからというので、私の仕事が終わってから2時間一緒に勉強しようとボランティアグループを立ち上げる半年くらい前から一緒にやってきました。
来た子も困っている、日本で生まれた子も困っている、いろんな困りがあるのに行政はわかってくれないというのがありました。
本当に困っている声がちゃんと届くかどうか。行政感覚ではちょっと違う線引きになってしまうのですよね。
日本語ができているのに勉強をしに来るのは塾とどう違うんですか?みたいに言われて、日本の子たちも勉強ができない子は塾にお金を払っていく、それと何が違うんですか?と言われてしまう。
日本の子たちと同じ塾に行ったからって、塾の先生が外国の子たちにわかりやすいように伝えてくれるわけじゃない、個別でもやってくれませんよね。
ーー久保さんは国際交流協会の頃から10年以上活動されてきて、明石で変わってきたなと思われている点はどういうところでしょうか?やはり外国の方は増えてきているのでしょうか?
増えてるのは増えてるんですね。2023年6月時点では3,770人でした。明石の人口が30万人だからその人数が多いか少ないかは人の判断によると思います。
国籍構成も変わっていて、前は中国や韓国・朝鮮籍の人が多かったのですが、今はニューカマーがすごい増えていて、3,770人の人口比率の中の819人がベトナム人に変わって来ていて、多数派の人たちがどんどん減っている。
最近ベトナムの方やフィリピンの方が多く来日されてこちらでお仕事をされてという多いかなと思うのですが、技能実習生ということで、3年くらい働くので、その間に恋愛して日本に残って結婚するとか、3年働いてこのまま日本で働かないかと言われて残っていく人もいます。実際研修生として来ている人たちたくさんいます。
ーー入管法も変わっているけど、改定で来る人が増えたということがある一方で、いままた永住権の人の条件が厳しくなったり、その辺の想いはどうですか?
永住権を持っている人が厳しくなるというのも、日本での生活をきちんとして欲しいという意味での厳しさは、私もいいと思いますが、ではそうやって厳しくしていくにしても外国からたくさん人が来てもらうにしてもサポートの準備が何もできてないのに、厳しいことだけを強いるのはどうかと思います。外国の人は日本語レベルがバラバラです。喋ることはできるけど、読んだり書いたりはできない人もいます。そういう人に、日本語でちゃんとしなさいという内容を伝えても、理解できないから、ちゃんとできるわけがないんです。そこは行政にも問題があるのではないかと思います。
ーー今なさっている活動の中に、【やさしい日本語】プロジェクトがありますよね。結構特殊技能が必要なのでしょうか?
言葉をたくさん知っていないとできないなというのと、もともとの原文を自分の中で読み砕く能力がないとちょっと難しいのではないかと思います。
やさしい日本語のプロジェクトは、月2回会議してその時にみんなに、私はこの表現を使ったけど皆さんどう思う?という議論を毎回しています。やさしい日本語プロジェクトには、現在6人が関わっています。
やさしい日本語にするには、例え話も必要ですし情報の取捨選択ができる、長い文章があった場合、この文章は必要ないですとスパンと切れる、伝えたい目的だけ言える情報整理ができる人が上手な感じはしますね。私は結構やさしい日本語は得意な方だと思うんです。あんまり日本語得意じゃない方とも普通に会話してできるんですけど、疲れると難しい言葉しか出てこなくなってしまうので、神経を使っています。
まんまるあかしは、2024年8月に活動拠点を移転されました。
さらに、8月26日に多国籍カフェをOPEN!楽しいイベントがいっぱいです。
ーー今回ここの新拠点は、どれくらいの準備期間がありましたか?
半年で、準備しました。一応構想としては前からあったんですが、開所式のときに言ったように、日本の人たちと外国の人たちが直に常設してふれあえる場所がないということ、働いてくれる彼女たちも頑張りたいと思っているのに頑張る、発揮できる場所がない、あとはうちにきて日本語を勉強している子たちの家族や周りの大人たちが楽しそうに働いていない、みんな結構言葉が通じなくて困っているとか、そんなのばかりを見ていたら、日本でこの先長く住んでいくのに夢も希望もないじゃないですか。
だから、ここで楽しく働いてくれている人たちを見たら自分たちも頑張ろうと思えるかな?そういう場所を作りたいねというのはずっと考えていたんです。
ーー今後、展望と言うか描いてらっしゃることはありますか?
まず、ここが地域の多文化共生の拠点になれるように育てていく、というのが一番ですね。あとは外国ルーツの子供たちがたくさん来ているのですが、年齢や目的別にクラスをちゃんと分けてやってあげたいなという思いがあります。進学するにも誰かの支えがないとなかなか難しいので。
カフェのことであれば3年後、4年後を目途にスタッフの誰かが独立してくれればと。
自分のお店を出しますという人を、1年くらいかけてみんなが応援するというようなプロジェクトを作ったりとか、そういうのも楽しいかなと。
あとは明石市というのは横長の市で、市の東の端の方に、私達の拠点があるんですね。教育委員会からの委託でいちばん西の端の小学校に放課後日本語支援教室をやっているのですが、全域カバーができてないというか、だから助成金をいただいて、今回は真ん中くらいの魚住というところに新しく教室をするんです。
お忙しいところ、ご自身の想いや団体のあり方を語ってくださった久保さん。
活動の原動力は、久保さんはじめ関わっておられるスタッフの皆さんの、「困っておられる方に対するやさしさ」であるように感じました。
ありがとうございました。